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「虫酸(むしず)が走る」という表現について、いささか勘違いをしていた。体をムカデが這(は)うような不快感を思い描いていたが、虫酸とは胃から上がってくる酸っぱい液だという。つまり胸がむかむかするほどの不快感、が正しいそうだ▼昆虫を将来の食糧にできないか――という報告書をこのほど国連の機関がまとめた。現在70億人の世界の人口は、2050年までに90億人を超すと見込まれる。爆発的に増える人類を養う一手として、「昆虫食」に目を向けるよう促す内容だ▼虫酸が走る方もおられようか。だが世界ではアジアやアフリカ、中南米などの20億人が虫を食べ、1900種以上が胃袋に収まっている。報告書によれば栄養たっぷり、健康的な食用資源という▼そういえば先の週刊朝日で、日本料理の道場(みちば)六三郎さんが昆虫料理を作っていた。「焼き竹の子とカミキリムシ幼虫の素焼き」など6品、見た目は乙(おつ)だ。「食材として十分使える」と名人は合点したようである▼江戸期の文献を見ても、例えばイナゴを「あぶって食べれば甘美で小蝦(こえび)のよう」とほめている。その佃煮(つくだに)あたりが入門編か。イモムシや甲虫は、さすがに少々ハードルが高い▼虫ではないが、「はじめて海鼠(なまこ)を食い出(いだ)せる人はその胆力において敬すべく」と書いたのは夏目漱石だった。飢えのためか、好奇心か、ご先祖様はなんでも食べてきた。いま農地は疲弊し、海は枯渇が心配されている。人類は虫に救われるのだろうか。ありがたいような、怖いような。