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推理小説には「隠し部屋」を使った筋立てがあり、シャーロック・ホームズの一編はよく知られる。名探偵は歩測して、廊下が下の階の廊下より短いのに気づき、死んだはずの人物が潜んでいた隠し部屋をあばく。人気の高い短編だ▼さて、巧妙な仕掛けを逃さぬホームズばりの目配りが、わが政と官には足りないらしい。去年、震災の復興予算が関係のない事業に使われて批判を浴びた。それなのに、いまだに流用が続いている。隠し部屋よろしく、「基金」にお金をためて抜け道にしているのだという▼農水省が所管する林業関連の基金は1399億円を得て、全国で1900キロの林道を造成した。被災地から遠い九州に造る目的は「復興に必要な木材の安定供給」というから、理屈と飯粒(めしつぶ)はどこにでもつく▼厚労省幹部が天下りする公益法人の基金には、新卒の就職支援に235億円が入った。ほかにも各省庁が入り乱れ、あれやこれやで額は膨らむ。チェックの目の届きにくい基金は、ともすれば蜜壺(みつつぼ)と化しやすい▼被災地に通い続ける建築家の福屋粧子(しょうこ)さんが本紙で述べていた。「変わる風景の中で時間経過の感覚は遠方とずれ、10年以上の時間が経ったようにさえ感じる。被災地で生活再建に向き合う方はなおさらだろう」▼あれから2年と2カ月、取り返せぬものを悲しみ、復興の遅さを嘆く人は多い。復興増税も始まっているが、便乗こじつけ式の流用は納税意欲を殺(そ)ごう。顰蹙(ひんしゅく)にめげぬ厚顔を洗い直してもらいたい。