北朝鮮がミサイル発射を準備し、日米韓三国は監視と迎撃態勢を取る。核実験強行で始まった東アジアの緊張は二カ月も続く。北朝鮮は発射を自制し、対話で緊張を緩和する道を進むべきだ。
北朝鮮は東部に中距離弾道ミサイル「ムスダン」を配備した。射程二千五百〜四千キロと推定され、日本上空を通過し米グアム島まで届く。より射程が短い「ノドン」「スカッド」も展開中という。
米韓両国は四月下旬まで合同軍事演習を実施中だ。北朝鮮は演習に強く反発しており、今月中は発射の恐れが十分にある。
外交も活発化している。ケリー米国務長官が韓国、中国、日本を歴訪した。周辺国が連携してミサイル発射を止める、もし北朝鮮が核開発断念への動きを見せればオバマ政権は交渉に応じる用意があるとの考えを示した。
北朝鮮がすぐに軟化する可能性は低いが、外交が機能しないままでは偶発的な衝突の危険が高まる。新たな核実験に踏み切る恐れもある。周辺国は十分に意見調整し、役割分担もして、北朝鮮がこれ以上強硬姿勢をとらず対話に臨む環境を整えていきたい。
韓国の朴槿恵政権は既に対話を呼び掛けている。操業が中断している北朝鮮・開城工業団地の再開がテーマだ。韓国の中小企業が進出し、北朝鮮側も労働者を派遣して外貨収入を得ている。北朝鮮はいったん拒否したが、経済の現状を考えれば交渉に応じるべきだ。南北対話が動きだせば、緊張緩和への第一歩となる。
軟化を促せるのは、やはり中国だろう。ケリー長官も強い期待感を示した。
中国は北朝鮮の貿易総額の七割を占め、石油、食糧の支援国でもある。圧力をかけすぎると北朝鮮の体制が不安定になり、多数の難民が越境してくるという懸念は理解できないわけではない。だが中国をおいて、ほかに強い説得役はいない。経済再建のために支援が必要ならば核やミサイル開発を中止せよと説き伏せるのが、大国としての責務であろう。
各国が悩むのは、金正恩第一書記がどこまで危機を高めるつもりなのか読めないことだ。最高指導者の地位を継承して一年。まだ三十歳といわれ、軍を完全に掌握しているのかもはっきりしない。
正恩氏の戦略を見極めるためにも、周辺国は北朝鮮に圧力をかけながら対話のテーブルに着かせる戦略を作り上げたい。
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