HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 14 Apr 2013 00:58:08 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:抗がん剤訴訟 副作用情報徹底に教訓:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

抗がん剤訴訟 副作用情報徹底に教訓

 肺がん治療薬「イレッサ」訴訟は、最高裁が国と輸入販売元の製薬会社の法的責任を認めず幕を閉じた。だが、「夢の新薬」が患者らにもたらした悪夢は消えない。薬事行政に重い教訓を残した。

 イレッサは二〇〇二年七月、副作用が少なく肺がんに効くとの評判とともに登場した。錠剤で飲みやすい。厚生労働省は承認申請から五カ月で世界初の承認をした。

 患者の期待も高かったが、使用が広がると間質性肺炎など副作用が原因と疑われる死亡例が続出した。販売開始から昨年末までに八百六十二人が亡くなった。現在も使われている。

 患者や遺族が問題にしたのは、重篤な副作用の情報を医師向けの添付文書で十分に提供できていたのか。医師が副作用の重大性を認識せず患者への説明も不十分だったのではないかという点である。

 患者の遺族が損害賠償を求めた東京の訴訟では、添付文書の記載方法や国の行政指導の妥当性が争点になった。

 東京地裁は国、製薬会社とも責任を認めた。東京高裁は一転、添付文書に欠陥はなかったと判断した。最高裁もそれを支持した。大阪で起こされ上告中だった別の訴訟も最高裁は同じ判断をした。

 だが、国と製薬会社はいかに副作用情報を的確に医療現場に伝えるか、その責任はなくならない。

 承認前に重篤な副作用は分かっていた。新薬への期待が、重要な負の情報を隠してしまった面があるのではないか。

 実際、厚労省は販売開始三カ月後に、添付文書での記載を目立つように変えた。医療機関へ注意を喚起するための緊急情報を出すと、健康被害の件数は減った。

 現場では現在、患者や投与を行う医療機関を限定し副作用情報の説明の充実に努めるようになった。厚労省は添付文書への監視・指導の強化や副作用被害への救済制度創設を検討中だ。動きは鈍いが、これまでの対応では不十分だったということだろう。

 こうした対応が市販時にできなかったものか、患者や遺族の思いはそこにある。

 薬には副作用がある。患者が納得して治療を受けるにはリスクを正確に伝える体制が欠かせない。

 再生医療が新しい医療として注目を集めている。メリットばかりに光が当たり、リスクを軽視して健康被害が起こっては医療の進歩を妨げる。新薬承認の迅速化は必要だが、この教訓を幅広く生かす姿勢は忘れてはならない。

 

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