情勢が緊迫してくると、冗談も通用しなくなるらしい。米誌ニューヨーカー(電子版)が十一日付で掲載した米国のユーモア作家のジョーク記事を、インタファクス通信などロシアの主要メディアが信じてしまった▼「至急電」などとして次々に報道したのは、北朝鮮のミサイル発射の延期は、コンピューターの基本ソフトが米マイクロソフトのウィンドウズ95から最新のウィンドウズ8に変わったことが原因と指摘する内容だ▼さらに、ソフトの変更によって起きた問題に激怒した金正恩第一書記が、マイクロソフトへの「宣戦布告」も検討している、とのおまけ付きである▼四月一日なら気付きそうだが、朝鮮中央通信からの引用と書かれている上に「父より攻撃的で予測不能」(在韓米軍司令官)な人物が君臨する国と考えると、ロシアのメディアが真に受けたのも分からないでもない▼正恩氏が朝鮮労働党の最高指導者の第一書記に就任して一年になった。複数の弾道ミサイルを発射する動きを示すなど、常軌を逸した挑発に日米韓はここ数日、強い緊張を強いられている。祖父の金日成主席の誕生日である十五日までに発射に踏み切る可能性がある▼苦労知らずの三代目が、飢えに苦しむ国民をほったらかしにした愚かな火遊びだ。そろそろ頭を冷やしたらどうか。世界を巻き込む打ち上げ花火など誰も見たくない。