地中海の島国キプロスの金融財政危機が世界を揺るがせた。難航の末、ユーロ圏からキプロスへの金融支援で収束には向かいそうだ。その場しのぎの危機対応を、欧州はいつまで続けるつもりか。
アベノミクス効果で沸く日本の株価も一時急落させたキプロス問題。欧州の小国の危機が地球規模で混乱を巻き起こす構図はギリシャ問題と同じだ。「なぜ」「またか」と疑問を感じた人も多いだろう。根っこにあるのは、共通通貨ユーロが抱える矛盾と、それゆえ危機がくすぶり続ける脆弱(ぜいじゃく)な欧州経済である。
キプロスは二大銀行を再編してユーロ圏から最大百億ユーロ(約一兆二千億円)の支援を受けることで、とりあえず財政破綻とユーロ離脱の事態は回避された。しかし、代償はあまりに大きかった。
それは、支援の条件として二大銀行の十万ユーロ(約千二百万円)を超える大口預金者に負担を強いる「特例措置」が取られたことだ。負担は30〜40%もの預金カットといわれる。ギリシャ危機でも同国の国債を持つ民間銀行に「借金棒引き」を強制するという「特例」の前例があり、その場しのぎの対応が繰り返されたのである。今後も危機のたびに理不尽な特例が続くのではないかと、不安や疑念を増幅させた罪は重い。
キプロスはユーロ圏の0・2%に満たない経済規模で観光と金融業が国を支え、特に金融は低い税率や緩い規制でタックスヘイブン(租税回避地)のようにして発達。歴史の接点が多いロシアの企業や富裕層の大口預金が集まった。
銀行界の資産規模は国内総生産(GDP)の七倍以上にまで膨らみ、その多くが隣国で関係が深いギリシャの国債や投融資だった。それが不良債権化し銀行危機に陥ったが、国家財政では救済する余力がなかった。同様に金融立国の小国で経済規模に占める金融業の割合が高いルクセンブルクやマルタも「対岸の火事」で済ますことはできないであろう。
ユーロ圏で経済規模が二〜五位で頭文字をとると「FISH(フィッシュ)」となるフランス、イタリア、スペイン、オランダの不況も深刻化するなど危機拡散の火種がくすぶっている。
小康状態になると危機対策の手を緩めるのがEU病だ。長引く欧州危機を収束するには、通貨は共通なのに銀行監督や財政は国ごとという矛盾の解消に向け、統合一元化の枠組みを進めるしかない。
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