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美空ひばりが熱唱した「柔(やわら)」は、荒っぽい手合いに目もくれぬ3番が聞かせる。♯口で言うより手の方が早い 馬鹿を相手の時じゃない……。柔道界の不祥事に、ひばり節が浮かんだ人もいたようだ。普通に聞けば「馬鹿」はごろつきやチンピラをさす▼だが深読みもできる。わが身に巣くう「馬鹿」である。腕力まかせに無理を通し、道理を引っ込ませる。柔道家であればこそ、そうした愚かさは心して封印せよ――と。なのに、と言うべきか。女子の指導をめぐる暴力沙汰は、愚を丸出しにしたような醜態だった▼監督らは、聞くに堪えない言葉で選手をののしってもいた。昔からのシゴキ体質を言う声もある中、柔道界の暴力根絶を山下泰裕氏が担うことになった▼ロス五輪の金メダリストで、全日本柔道連盟には切り札だろう。「全柔道家の力をいただいて暴力を一掃する」の言に期待したいが、何せ連盟は古沼のようによどむ。新たに助成金の不正疑惑も明るみに出ている▼昨今は、何かあると猫も杓子(しゃくし)も「第三者委員会」となる。免罪符さながらだが、当事者に自浄能力がなければ、いっとき清い水を注いでも沼は澄むまい▼東京五輪で優勝したヘーシンクは、歓喜したオランダの関係者が畳に駆け上がるのを手で制止した。敗者への気遣いだった。ロス五輪の決勝でエジプトのラシュワンは、山下の痛めた右足をわざとは狙わずフェアプレーに徹した。私たちが柔道で聞きたいのは、こんな話。愚かで薄汚れた話ではなく。