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小康状態だった欧州の金融システムが、地中海の小国キプロスから不意打ちを受けた。発端は主要銀行の経営悪化である。その救済が財政危機に連鎖しないよう、欧州連合(EU)のユー[記事全文]
国民一人ひとりに番号をふり、社会保障分野などに活用する共通番号(マイナンバー)の導入をめぐって、国会での審議が始まった。法案は1年余り前、民主党政権下で一度出されたが、[記事全文]
小康状態だった欧州の金融システムが、地中海の小国キプロスから不意打ちを受けた。
発端は主要銀行の経営悪化である。その救済が財政危機に連鎖しないよう、欧州連合(EU)のユーロ圏諸国が100億ユーロ(約1兆2300億円)の支援を表明し、キプロスにも58億ユーロ(約7100億円)の負担を求めた。
しかし、その資金を銀行預金への臨時課税でひねり出すことにキプロス国民が猛反発し、混迷が深まった。
曲折の末、キプロス2位の銀行を分割・再編する形で破綻(はたん)処理し、10万ユーロ(1230万円)以上の高額預金を大幅にカットすることで、辛うじてユーロ圏とキプロスが合意した。
ユーロ圏が拡大している時期には、特に経済小国でバブルが発生した。キプロスでも安い税金や緩い規制を目当てに、外国から多くの預金が集まり、金融資産は国内総生産(GDP)の7倍にも及ぶという。
ところが、預金を膨らませた主要銀行がギリシャ危機をきっかけに運用に行き詰まり、金融不安が高まった。
通貨は共通なのに、財政・税制や金融監督は国単位というユーロの根本的矛盾がここでも露呈したといえる。
さらに問題を複雑にしたのはロシアからアングラマネーを含む多額の預金が流入していて、ユーロ圏とロシアとの利害対立を招いたことだ。ロシアは11年末に金融支援をし、一度は安定を取り戻した経緯があったが、今回は支援を断った。
「ユーロ離脱」という事態は避けられたとはいえ、経済規模でユーロ圏の0・2%しかない小国が欧州を振り回すほど、ユーロの足元はもろい。
政局不安のイタリア、経済が停滞するフランス、秋の総選挙を控えて内向きなドイツ――。危機に対応するユーロ圏内の結束には遠心力が働いている。
混迷のさなか、キプロスに譲歩を迫るため欧州中央銀行(ECB)が資金供給を止めると圧力をかけたことが、金融システムの安定性に影を落とす恐れもある。
「最後の貸手」としてのECBの信頼性に疑問符がつけば、キプロスだけでなく、ギリシャやスペイン、イタリアなど他の問題国からの資金流出も誘発しかねない。
危機の拡散を防ぐため、ユーロ圏はキプロス支援をしっかり実行するとともに、金融監督を統一する銀行同盟などの枠組みを早く軌道に乗せていかなければならない。
国民一人ひとりに番号をふり、社会保障分野などに活用する共通番号(マイナンバー)の導入をめぐって、国会での審議が始まった。
法案は1年余り前、民主党政権下で一度出されたが、与野党の対立から廃案になった。その仕切り直しである。
共通番号は年金や雇用、医療・福祉関連の給付や納税事務、災害時の支援金の支給などに限って活用する。民間業者の利用は認めない。独立性の高い第三者委員会を置き、個人情報の取り扱いを監視する。
少子高齢化に対応するため、消費税の増税が決まった。負担と給付をしっかり管理し、社会保障や税の制度をより公平に、効率的にしていくことはますます重要になっている。共通番号はその大きな柱となる。
しかし、国民の間で認知度は低い。住民基本台帳(住基)ネットに対して、強い反対が起きたことも記憶に新しい。
共通番号を円滑に導入し、定着させるうえで、まず重要なのは個人情報保護の徹底だ。
政府は年金や税など既存のシステム改修を含め、システム構築に2千億円以上を投じる。むだな投資を防ぐのは当然だが、安全性が十分なのか、専門的な見地からも点検が必要だ。
同時に、共通番号によって得られる利点や行政の効率化、さらに活用分野の拡大についても認識と議論を深めたい。
社会保障の給付申請や税務署への申告の際、あちこちの役所を回って必要な書類をそろえる手間が省け、受給や納税に関する自分の情報をパソコンで確認できる。重複支給や過少申告もチェックしやすくなる――現時点では、こんなメリットが強調されている。
活用の拡大が考えられるのは、たとえば納税分野だ。共通番号を使って納税者ごとに所得や資産の全体像をつかみやすくすれば、負担力に応じた課税に役立つのではないか。
健康状態や診療・投薬情報をさまざまな医療・介護機関が番号を介して共有することも、検討課題のひとつだ。
ただ、よりよい医療サービスを効率的に提供できる可能性が高まる半面、情報が漏出する恐れも増す。厚生労働省の有識者会合が昨年、検討を重ねたが、論点整理にとどまった。
法案では、法施行から3年をめどに活用範囲の拡大を検討するとされた。安倍首相も預金口座への拡大を念頭に金融犯罪対策を強める可能性に言及した。
国民の理解を広げるため、精力的に議論してほしい。