HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 71054 Content-Type: text/html ETag: "4a0733-19f1-db7aa640" Cache-Control: max-age=1 Expires: Mon, 25 Mar 2013 02:21:07 GMT Date: Mon, 25 Mar 2013 02:21:06 GMT Connection: close
いささか意地悪く言えば、名大関とは横綱になれなかった力士である。だが、なったものの「へぼ横綱」と腐(くさ)されるよりは名大関の方が味わい深い。むろん最高位である横綱に「名」や「大」がつけば、土俵入りにも後光がさす。この人の存在は、いまやゆるぎない▼荒れた春場所、白鵬は他を引き離して13日目に優勝を決めた。通算24回は史上4位タイで北の湖に肩を並べる。憎らしいほど強いといわれ、負けると喝采がわいた昭和の大横綱である▼これで37場所連続の2桁勝利となり、歴代1位の北の湖にここでも並んだ。中日(なかび)の勝ち越しは26度目で、最多だった横綱千代の富士を抜いた。めったに取りこぼさぬ強さは揺るがぬ山を思わせる▼千秋楽でも偉業を果たした。9度目の全勝優勝は、極めつきの大横綱、双葉山と大鵬を超えて1位になる。白鵬が敬愛してやまない両力士である。「2人の上に立つことは、恐縮ですけど光栄です」。上気した顔から謙虚な喜びが口をついた▼74年前、69連勝の双葉山を負かした安芸ノ海は「オカアサン、カチマシタ」と郷里に電報を打ったという。平幕が横綱を破る金星の、誇らしさの極みだろう。金星の歓喜は横綱の強さに比例する。たやすく負けない存在は、下位の力士にどれほど励みになることか▼〈やはらかに人分け行くや勝角力(かちずもう)〉几董(きとう)。きのう花道を引きあげる白鵬は、春風駘蕩(しゅんぷうたいとう)として、肩に散りかかる桜を見るような思いがした。孤高の強さを脅かす若手を、あとは待ちたい。