HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 24 Mar 2013 02:21:04 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:週のはじめに考える 「清潔大国」のモデルに:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

週のはじめに考える 「清潔大国」のモデルに

 「二年前の原発事故を防げていたら」。そう思う人が多いはずです。帰るに帰れない故郷。クリーンな国づくりと成長戦略を結びつけてはどうでしょう。

 新指導体制が発足した中国は国内総生産では日本を抜いて世界第二位ですが、「貧富の格差拡大」「幹部の腐敗急増」「大気など環境汚染」に悩んでいます。微小粒子状物質PM2・5で「気管支炎(中国語では気管炎)」になる人は「恐妻家(妻管厳)」といわれるとか。チー・グアン・イエンとの発音が同じだからですが、笑い話ではかたづけられません。

◆政治汚職は減ったが

 こうした隣国を見ていると、汚職や公害が多発した高度成長期の日本を思い起こします。ロッキード事件(一九七六年)リクルート事件(八八年)東京佐川急便事件(九二年)など自民一党支配時代に多発した大きな政治腐敗事件がここ二十年ぐらい影をひそめました。政治の中身が良くなったかは別問題として、「クリーン」をうたった首相が再登場しないでも済む状況は歓迎すべきでしょう。

 一方、環境問題への認識は日本全体で進み、東日本大震災までは「きれいな国」へと観光客も増加傾向にありました。それだけに東京電力福島第一原発事故で「清潔な国」イメージが大きく崩れたことは遺憾の極みです。

 元来、日本人は潔癖で、きれい好きと見られてきました。トロイの遺跡を発掘したことで知られるドイツの考古学者ハインリッヒ・シュリーマンは一八六四年から世界漫遊をしましたが、江戸時代の日本に約一月滞在して、次のような印象を書き残しています。

 「彼ら(役人)に対する最大の侮辱は、たとえ感謝の気持ちからでも現金を贈ることであり、彼らも現金を受け取るくらいなら『切腹』を選ぶのである」

◆清潔と関連する長寿化

 「日本人が世界でいちばん清潔な国民であることは異論の余地がない。どんな貧しい人でも、日に一度は公衆浴場に通っている」(「シュリーマン旅行記 清国・日本」講談社学術文庫)

 「清潔」「きれい好き」という性向は、健康・長寿や経済成長とも関連性があります。経済史が専門のロバート・アレン氏(オックスフォード大教授)は「なぜ豊かな国と貧しい国が生まれたのか」(NTT出版)の中で、産業革命が起こる前の十六世紀には世界中で暮らし向きに大差がなかったといいます。産業革命による技術革新で英米が豊かになり、明治維新後の日本などが懸命にキャッチアップを図りました。アレン教授は、食生活の向上で日本人男性の平均身長が一九七六年時点で明治期に比べ十センチ以上伸びたと例示しています。そういえば中国でも七〇年代は「一メートル以下は無料」だった子ども料金(中国ではバス、映画館などの子ども料金は身長で決めるのが習わし)が近年、「一・二メートル以下」(都市によっては一・三メートル以下)に改定されました。経済発展に伴う体力向上に合わせた措置でしょう。

 また欧米以上に早い速度で進んだ日本人の長寿化には食生活と並行して医療の進歩、感染症の予防などが大きく作用しているとみられています。

 だが同教授は日本ではキャッチアップの時代は既に終わり、他の先進国と同様に「年1、2%しか成長できない」と指摘します。

 安倍晋三内閣は2%の物価安定目標を軸に「三本の矢」を掲げていますが、問題は成長戦略の方向です。市場第一主義ではなく、グローバル経済の中での「日本の売り(強み)」は何かを具体的に見せることが必要です。

 一例を挙げます。きれい好きの民族を象徴するように日本では温水洗浄便座の普及率が一般家庭で七割を超えています。もともとは米国で医療用に開発されたものを輸入販売したのですが、欧米も含めて世界的普及はまだまだです。TOTO、INAXなど日本製の輸出が拡大しています。国内でも和歌山県が二年計画で県内の公衆トイレ全部に導入すると発表しましたし、東海道新幹線でも来春以降、新型車両につけられます。

 携帯電話の分野では日本のガラパゴス化(日本独自の仕様)が批判の対象になりましたが、トイレ技術では日本製品を世界仕様に広めるときです。ほかにも空気清浄機、汚染水のろ過装置、井戸掘り機械、廃棄物削減や循環型社会へのノウハウなど衛生関連での「売り」はまだまだあります。

◆クリーンジャパン推進

 発想を拡大し、エネルギー政策の見直しをはじめ日本が「清潔大国」の手本になる目標を掲げ国づくりを進めてはどうでしょうか。「クールジャパン」(アニメなど文化の輸出策)とともに「クリーンジャパン」の推進です。

 

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