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ミセス・ワタナベが舞い戻ってきたのだという。実在する人物ではない。13年前の小欄が英誌エコノミストの一節を引用している。「ミセス・ワタナベ、それはどこにでもいる日本の主婦。一家の財布を握り、大胆不敵に投資する」▼海外の金融関係者やメディアが日本の個人投資家をいうときの符丁のようなものか。いまでは女性と限らないらしい。多少リスクのある商品でも果敢に手を出し、利ざやを追う。それがミセスの特性である▼しばらくひっそりしていたその人たちが、株や為替の世界で再び動き出している。英紙フィナンシャル・タイムズが先日、そう報じた。アベノミクスの効果が「トリクルダウン」し始めて、利にさとい人々の背中を押しているのだ、と▼この片仮名言葉、小泉改革時代によく聞いた。お金持ちを大切にし、より儲(もう)けられるよう取りはからえば、持たざる者にまで恩恵が滴り落ちてくるという理屈だった。結果はどうだったか。企業はともかく家計が前より潤った実感はあったか▼このところ景気の復調をうかがわせる話が続く。地道に資産形成に励んでおられる方々には朗報だろう。言祝(ことほ)ぐべきところかもしれないが、またぞろ世はマネーゲームの時代かという先案じと抱き合わせでもある▼米国の経済学者ガルブレイスは、資本主義は暴走を繰り返すと警告した。しかも災厄の思い出は長くは続かない。20年もすれば熱狂が装いも新たに再来する、と。われらがバブル崩壊の痛みの記憶はいかに。