HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 76850 Content-Type: text/html ETag: "b1beae-30bd-caa6f800" Cache-Control: max-age=2 Expires: Fri, 22 Mar 2013 22:21:03 GMT Date: Fri, 22 Mar 2013 22:21:01 GMT Connection: close
何の成算もないままの見切り発車と言うほかはない。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設に向け、防衛省がきのう、移設先とする名護市辺野古沖の埋め立てを沖縄県に申請した。[記事全文]
地方分権の考えにたち、税金の徴収についても、自治体の判断をできるかぎり尊重するか。それとも、「課税こそ政治のおおもと」ととらえ、国が法律としてさだめた枠をしっかり守ることを求めるか――。[記事全文]
何の成算もないままの見切り発車と言うほかはない。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設に向け、防衛省がきのう、移設先とする名護市辺野古沖の埋め立てを沖縄県に申請した。
これを受けて、仲井真弘多(ひろかず)知事が8カ月前後をめどに、承認の可否を判断する。
県民の圧倒的多数が辺野古への移設に反対しているなかでの埋め立て申請は、かえって問題をこじらせる――。私たちは社説でこう指摘してきた。
残念ながら、それが現実となってしまった。
仲井真知事はきのう、「全41市町村が『反対』と言っているなかでどうやってやるのか。理解できない」と語った。名護市の稲嶺進市長も「不意打ち、抜き打ち的」と政府の対応に不快感を示した。
沖縄の人々が不信感を募らせるのは当然だろう。
こんな事態を招いておきながら、知事に承認を迫るのはあまりにも無責任だ。
安倍政権が埋め立て申請を急いだのは、何よりも「日米同盟強化」の証しとして日米間で約束した早期移設への「実績」を示す狙いがある。
年明けの名護市長選で反対派が勝てば移設が一層困難になることから、その前に知事が承認できる環境を整えたいという判断もあったのだろう。
だが、申請が沖縄の態度を硬化させたことは否めない。
安倍首相はこれまで「沖縄の人々の声に耳を傾け、信頼関係を構築しながら移設を進めたい」と語ってきた。
だが、やっていることはまったく逆ではないか。
普天間問題だけではない。
安倍政権は、1952年のサンフランシスコ講和条約発効と日本の独立を記念して、4月28日に政府主催の「主権回復の日」の式典を開く。
連合国による日本占領が終わった日だが、米軍の施政権下におかれた沖縄では「屈辱の日」と呼ばれている。
本土から基地を次々と移して、過重負担をもたらした。当然ながら、沖縄からは反発の声があがっている。
安倍政権は米国への配慮を重ねながら、沖縄の人々の心情を軽視しているとしか思えない。
政府は今後、沖縄の負担軽減策も進め、県民世論の軟化を促す構えだ。だが、そんな小手先の対応で県民が容認に転じるとは考えにくい。
知事が「ノー」と言ったとき、その責任を、首相は自ら取る覚悟はあるのか。
地方分権の考えにたち、税金の徴収についても、自治体の判断をできるかぎり尊重するか。それとも、「課税こそ政治のおおもと」ととらえ、国が法律としてさだめた枠をしっかり守ることを求めるか――。
専門家の間で意見がわれ、裁判所も地裁と高裁で結論が異なった問題に、決着がついた。
神奈川県が独自にもうけた臨時の企業課税条例を、最高裁は「地方税法に違反し無効」と判断した。ふたつの考え方の後者をとったと言っていい。
地方税法は、利益がでている企業でも、過去に赤字があったら相殺して税を安くすると決めている。いっぽう県条例は、この相殺を事実上やめ、単年度で利益があがれば、それに見あう課税をすることを図った。
最高裁は「税負担を均等化し公平な課税をするという法律のねらいや効果を、下位のルールである条例で阻むことになる」と、無効の理由を述べた。
分権の流れに反する判決と見る人も少なくないだろう。地方が自分の足でたち、政策を展開するには、財政の自己決定権をもつことが大切だ。
だが、税をおさめる側からすれば、相手が国であれ自治体であれ、「法の支配」に反する行いをされてはかなわない。
古来、「代表なければ課税なし」という。憲法が、税金を課すには、国会が制定した法律によらねばならないという租税法律主義をとるのはなぜか。
それが、民主主義の原点ともいうべき考えだからだ。
この点をゆるがせにして地方自治の拡大・発展を唱えても、説得力に欠ける。判決は、そのことをあらためて確認させるものとなった。
最高裁も自治体の課税自主権を否定したわけではない。今回の司法判断を踏まえ、どんな道をさぐるべきか。関係者は議論を深めてもらいたい。
気になるのは、首長や議員の多くが、自治体の判断でできる住民税率の引き上げなどには及び腰なことだ。選挙への影響を考えるためで、かわりに、企業をふくめ「取りやすいところ」から取ろうという傾向が強い。
それでいいのだろうか。
地域の実情にあわせ、どんなサービスを提供し、いかなる負担を求めるか。対話をかさね、答えを見いだす。それが地方自治の本来のあり方だ。
あわせて、国と地方の税源配分の見なおしという課題に、引き続きとり組む必要がある。
住民、首長・議会、国。三者が同じ方向をめざして歩んだ先に、地方自治の発展がある。