<ランドセルこれが苦労のはじめかも>は、上方落語の桂米朝さんの句だ。真新しいバッグを背負った子どもたちが、ぴっかぴかの笑顔で学校に向かうのも、もうすぐ。新一年生が背負うランドセルは余りにも大きく見え、それがまた初々しさを倍増させる▼大きすぎるランドセルも六年たつと、すっかり小さく見えるようになる。卒業式を終え、「ご苦労さま」の声とともに、押し入れ行きとなるものも多いだろう▼そんなランドセルをアフガニスタンに送る運動が続いている。NGO「ジョイセフ」が九年前に始め、これまでに十万個が、子どもたちに届けられたという▼アフガンの小学校を訪れたことがある。テロへの報復として米国が空爆を始めた直後だから、十二年前だ。七百人ほどが通う学校だったが、校舎は草ぶきの屋根の下の土間に、ござを敷いただけ。壁もない。授業中も砲撃の音が、遠くから聞こえていた▼そこの児童らに大人気だったのが、米軍機が投下した支援物資入りのバッグだった。「人道援助食料 米国民からの贈り物」と大きく書かれた黄色いビニール製のバッグが、格好の通学かばんになっていた▼<仮校舎でも入学児には花の園>は、米朝さんが阪神大震災後に詠んだ句。アフガンのござ敷きの学校も新入生には花の園だ。ランドセルが届けば、ぴっかぴかの笑顔がたくさん咲くだろう。