HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 20 Mar 2013 03:21:04 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:イラク開戦10年 幻の「大義」が問うもの:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

イラク開戦10年 幻の「大義」が問うもの

 イラク戦争の開戦から二十日で十年。幻の「大量破壊兵器」を口実に強行された戦争の傷痕は深く、むしろ核拡散の脅威は先鋭化している。武力行使の正当性は今後も繰り返し問われよう。

 バグダッド空爆で始まったイラク戦争は、二〇一一年末の米軍完全撤退まで少なくとも戦費八千億ドルを費やし、米兵死者は約四千五百人に及んだ。イラク側犠牲者は兵士、市民合わせて十数万人との民間試算はあるが、正確なデータすらまだない。

 国連を無視した「先制攻撃論」や、最先端軍事技術を駆使した「新しい戦争論」など、ブッシュ前政権の単独行動の背景には、冷戦後に唯一の超大国となった米国の突出した軍事力、アルカイダによる米中枢同時テロ以降高まった米国内の愛国主義の熱狂があった。

 ブッシュ前大統領が開戦で宣言した「大量殺人兵器による差し迫った脅威」なる大義が虚報だったことが判明した後、戦いの大義探しは、中東の脅威フセイン政権排除や、地域民主化へと移ったが、いずれも後付けだった。

 憲法制定、二度の選挙を経てイラクが民主的体制を整えた意義は大きい。しかし、多数を占めたシーア派と少数派スンニ派による宗派対立を背景に政府機能は混迷を続け、本格復興への道は遠い。

 また、「アラブの春」はチュニジアの一青年の抗議自殺に端を発するアラブ人による民衆革命だったことは忘れてはなるまい。

 オバマ大統領は、イラク戦争を終結させ、アフガン戦争終結に道を開いた。イスラム過激派による時代錯誤的なテロが発端だったとはいえ米国の暴走を米国自身が修正した実績は評価されよう。

 懸念されるのは、ブッシュ路線回帰を訴えた共和党候補を二度まで破り有権者の負託を得たオバマ大統領が、二期目就任に当たって内向き姿勢を見せていることだ。

 自国の国家再建に集中しなければならない事情は理解できる。しかし、中東の民主化は緒についたばかりだ。シリアの混沌(こんとん)、イランの核疑惑への対応は切迫した課題として残されたままだ。米国が果たすべき役割は依然小さくない。

 オバマ大統領は二期目の最初の訪問国としてイスラエルを選んだ。中東を含む国際社会の新秩序への端緒を示してほしい。破壊するだけではなく、国際社会の再建戦略を担ってこそ、大義なき戦争という負の遺産を受け継いだ米国の指導者にふさわしい。

 

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