HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 69933 Content-Type: text/html ETag: "13b667b-19c7-d9bf1c0" Cache-Control: max-age=1 Expires: Tue, 19 Mar 2013 02:21:05 GMT Date: Tue, 19 Mar 2013 02:21:04 GMT Connection: close
オレンジ色と青の取り合わせは互いを引き立てる。こうした関係を色彩学で補色(ほしょく)と呼ぶそうだ。青空へ噴き出し、海面に映えるその炎は、なるほど爽快この上なかった。日本の技術陣が1週間にわたり、愛知沖の「燃える氷」から天然ガスを取り出した▼水深千メートル、その地下300メートルほどに広がるメタンハイドレートの層。水とメタンの「シャーベット」までストローよろしく井戸を掘り、ガスを船に導いた。海底からの採取は例がない▼「ガス田」は静岡から紀伊半島、九州沖に横たわる。日本海側を含め、近海には世界屈指の埋蔵量があり、うまくやれば天然ガス消費の100年分を賄えるという。いわば庭先に埋まる大金だ。何より、隣国にお構いなく掘り出せるのがいい▼日本のエネルギー自給率は水力中心に5%足らず。原発事故による電力不足を火力で補う今、国産エネルギーへの期待は募る。生産コストや回収法など壁は高いが、米国が沸くシェールガスのように、官民で実用化を急いでほしい▼太平洋のガス田は巨大地震の巣と重なる。その南海トラフが暴れれば、最悪220兆円の経済被害を伴うという。昨夏の「死者32万」に続く怖い想定である。恵みの海が、たちまち呪いの海に化けたのは2年前だった▼不毛の砂漠に石油が眠り、貧困と戦乱のアフリカにはダイヤモンドや金が埋まる。あらゆる地にバランスシートがあるのなら、日本は太平洋に無限の貸しがある。自然を畏(おそ)れつつ、正当な恵みは追い求めたい。