HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 18 Mar 2013 02:21:08 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:新・中国はどこへ<1> 民衆の怒りを侮るな:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

新・中国はどこへ<1> 民衆の怒りを侮るな

 全人代の開幕日、何十台もの欧州製高級車がひしめくように北京の人民大会堂裏口に向かうのが見えた。温家宝前首相の政府活動報告を聞き終え、党や政府の幹部が帰路を急ぐ様子だった。

 温氏は演説で「所得分配の格差を縮小し、発展の成果の恩恵がより多くより公平に全人民にいき渡るように」と声を張り上げた。

 会場に響いた「公平」のかけ声と、人民代表の高級車群の対比こそ、中国が抱える格差の矛盾をさらけ出していたのではないか。

 公式統計ですら、都市と農村の収入格差は三倍以上ある。富裕層と貧困層の差ともなれば、天文学的数字ともいわれる。

 特に、都市と農村の格差は深刻だ。温氏は「農民の財産権の保障」を繰り返し訴えた。地方政府が農民が請け負う土地をろくな補償もなしに収奪しているからだ。

 収奪の狙いは再開発による金もうけである。農民の反発は激化する。全人代の最中にも、広東省の村で農地を不正売却しようとした幹部に怒り、村民三千人と武装警察が衝突した。

 見逃せぬのは、「農村問題の本質は社会的な身分差別」(王新生・北京大教授)との鋭い指摘だ。毛沢東時代、半世紀前の戸籍登記条例が、都市と農村の戸籍を分けた。差別の起源だといえる。

 農村からの安い食糧の安定供給や都市の治安などが目的だった。農民を犠牲にした都市住民の優遇策と言われても仕方がない。

 農民は公安部門が管理する戸籍で農村にしばりつけられた。かつては、大学に入学するなどのほかは、農民の身分を変えられなかった。

 医療など社会保障の水準でも都市住民と差別される。義務教育の無料化や、一部で都市戸籍を徐々に開放する試みもあるが、「二等公民」のような差別をやめぬ限り格差はうまらない。

 腐敗続きで辛亥革命で倒れた清朝はむろん、中国の多くの王朝が農民反乱で滅亡した。民衆の怒りを侮ってはならない。

 (論説委員・加藤直人)

 

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