HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 16 Mar 2013 21:21:11 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞: とにかく、石を打つ所作が美しい。碁を知らぬ人が見ても、そ…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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 とにかく、石を打つ所作が美しい。碁を知らぬ人が見ても、その美しさは、一目で分かるはずだ。史上初の囲碁タイトル六冠を達成した井山裕太さん(23)の左手は、最強にして、実に華麗だ▼右利きなのに、碁だけは左手で打つ。碁好きの祖父が「左手を使うと右脳の刺激になる」と勧めたとの話が流布しているが、本人は「いや恐らく、小さなころ右手の皮膚炎がひどかったので、やむなく左で…ということでしょう」と笑う▼五歳で碁を覚え、わずか一年で三段。小学二年で小学生名人になり、十二歳でプロ入り。二十歳で名人となり、それから三年で主要タイトルをすべて手にしてきた。が、早熟な故、挫折の怖さを知るのも早かった▼小学四年でスランプに陥り、真っ暗な部屋で一人碁盤を見つめた。師匠の石井邦生九段の著書『わが天才棋士・井山裕太』に、そんな姿を見守ったお母さんの言葉が記されている▼「小さいのに大きなものを背負っているんだなと。言ってやりました。あなたは宝物。碁が強いから大切なのではない。たとえ強くなくても私たちの子供なんだから…」。井山君は大声で泣きだしたそうだ▼小学生名人になった時は「世界一の棋士になりたい」と言ったが、実際に中韓勢の強さに触れてからは、その思いをほとんど口にしなくなったという。夢を叶(かな)える覚悟を、深く秘めてのことだろう。

 

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