HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 70309 Content-Type: text/html ETag: "14625d1-19b5-a6288a80" Cache-Control: max-age=1 Expires: Fri, 15 Mar 2013 00:21:06 GMT Date: Fri, 15 Mar 2013 00:21:05 GMT Connection: close
アメリカ大陸が「発見」された1492年は、イベリア半島からイスラム勢力が追い出された年でもある。宗教的な熱狂の中、宿願を果たしたスペインは先行するポルトガルを追って新世界へ漕(こ)ぎ出す。目的は金銀、そしてキリスト教の布教だった▼コンキスタドール(征服者)たちは、先住民が築いた文明を滅ぼし、中南米を「カトリックの大陸」にした。世界に11億人とされる教徒の4割が、今ここに暮らす。その現実を映した結論でもあろう。266代目のローマ法王に、初めて「新大陸」の出身者が選ばれた▼アルゼンチンのホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿(76)で、フランシスコ1世を名乗る。約600年ぶりに「生前退位」した前法王(85)に続き、その名も宗教史に刻まれる▼保守派と改革派の間を取った人選らしい。新法王をあえて分類すれば、サッカーとタンゴを愛し、バスで通勤する庶民派とか。「友人の枢機卿たちは、世界の果てまで(法王を)探しに行ってしまった」と、第一声も柔らかだった▼果てとは言わないまでも、バチカンを遠く離れた旧スペイン植民地からの就任である。片やポルトガルが支配したブラジルは、今や最大のカトリック国。キリスト教の重心が大西洋を渡り、南に下った印象だ▼新大陸の「分割」を巡り、スペインとポルトガルを仲介したのも当時のローマ法王だった。新天地で信者を増やし、500年後の頂上人事でその子孫を教会につなぎとめる。昔も今もしたたかな組織である。