オバマ米大統領との首脳会談で「聖域」を勝ち取ったというパフォーマンスを演じた安倍晋三首相にだまされたふりをしているのか、環太平洋連携協定(TPP)反対を公約して当選した自民党の衆院議員が静かだ▼事実上、交渉参加を容認する党の決議案をきのう了承。これを受けて、首相はあすにも交渉参加を正式表明する。選挙前にあれだけ激しく反対していた人たちの驚くような豹変(ひょうへん)ぶりだ▼民主党政権時代から、政府は大事なことを隠している印象を持っていたが、極めて重要なことが分かってきた。交渉の根幹にかかわる内容である▼遅れて交渉参加を表明したカナダとメキシコは、既に交渉を始めていた米国などから「交渉を打ち切る権利は九カ国のみにある」「現在の参加国間で合意した条文は原則として受け入れ、再交渉は要求できない」などと極めて不利な条件をのまされ、その念書を両国は極秘扱いにしていた▼交渉参加を正式に表明しても、参加国と認められるまで三カ月以上、日本政府は協定条文の素案や交渉経過を閲覧できない。これでは、日本側がルールづくりに主張を反映させる余地が乏しいのは明らかだ▼支持率の高い首相には勝てないという判断なのか。死守できる聖域は果たしてどれぐらいあると、自民党の議員の皆さんは考えているのだろう。有権者への背信とは思わないのですか。