HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 12 Mar 2013 22:21:07 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:出生前診断 もっと深く考えたい:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

出生前診断 もっと深く考えたい

 妊婦の血液で胎児の染色体異常を調べる新しい出生前診断の実施指針がまとまった。安易に使われないためにルールをどう整えるのか。命の選別という倫理問題も絡むだけに慎重に進めてほしい。

 新型の母体血胎児染色体検査は、ダウン症などの先天的な障害を調べるものだ。

 これまでも出生前診断法はあったが、新型の検査法は精度が極めて高い。しかも血液検査という簡単な方法で診断ができるため、医療現場で安易に広がり妊娠中絶が増えるのではないか、と懸念されている。

 そうなる前に検査ルールの整備を目的に日本産科婦人科学会は実施するための指針を公表した。

 対象を高齢妊娠や染色体の疾患などが疑われる人、染色体異常の妊娠歴がある人などに限定した。

 検査で何が分かるのか、検査結果の受け止め方、障害を受け入れようとする親の支援など十分なカウンセリングが欠かせないとして、実施する施設には産婦人科医と小児科医の常勤を求めた。うち一人は臨床遺伝専門医の資格を持つことが要件とした。

 実施施設の認定・登録制度も設けて監視する。準備中の施設は臨床研究として四月にも始める。

 検査は、千人に五人の頻度で生まれる一部の染色体異常のみが対象である。先天性の障害や疾患が限定的にしか分からない。しかも確定的な診断ではない。

 検査を十分に理解してもらうにはカウンセリングが不可欠だが、臨床遺伝専門医は約千人、専門のカウンセラーは百四十人と少ない。対象者や施設を限定した慎重さは当然だ。人材育成とともに症例を積み、検査体制を整えてもらいたい。

 指針には拘束力はないが、厚生労働省は医療現場に指針の尊重を求めた。生命の否定につながりかねないだけに、全ての関係者が守るべきものだろう。

 一方で、検査は妊婦の権利でもある。新型検査の普及も止められない。今後、技術が進めば出産前に異常が分かる障害や疾患の範囲も広がるだろう。

 以前の検査は治療につなげられたケースもあったが、今は治療法のない異常が分かってしまう。技術進歩で命の選別という倫理的な問題に直面している。

 臓器移植での脳死は、国会でも議論された。何のために出生前診断を行うのか、妊婦や医療関係者だけの問題ではない。ここは立ち止まって、深く考えたい。

 

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