子どもたちの命をどう守るか。大震災の被災地、宮城県では今、各学校に防災専門の主任教諭を置いている。議論を重ねた末の制度だ。他の自治体でも学校、ひいては地域防災の参考にならないか。
死者・行方不明者一万人余。東日本大震災の宮城県の犠牲者は最も多く、子どもだけの数をみても例外ではない。四百人を優に超えた。大半が津波にさらわれた。
学校の防災対策も、かねて津波を念頭に怠りなかった。にもかかわらず、十分だったはずの備えを、はるかに超える巨大地震と大津波が襲った。
河口から約四キロ奥、石巻市の大川小にも「まさか」の津波が押し寄せ、児童の七割に当たる七十四人が死亡・不明になる惨劇が…。
学校防災のあり方を県教委を中心に根底から見直した。その柱が全国で初めての「防災主任」制度である。震災翌年から導入し、公立のすべての学校に配した。
それまでの防災担当は防犯や事故などもこなす、安全の何でも担当。主任制は(1)教育(2)マニュアル整備(3)地域との連携−など、役目を防災に絞った点に意義がある。
むろん校舎の耐震化などハード面の整備は欠かせぬが、この制度はソフト面の対策といえる。
東海・東南海・南海の三連動や南海トラフ巨大地震が心配される東海地方などから、現地へ視察・研修が今も引きも切らない。
国内最悪の津波高が“想定”されている静岡県。下田市の最大三三メートル(県の中間報告)を筆頭に、空恐ろしい数値が並ぶ。
学校防災では、東海地震に備えた独自の策「責任指導者」制を一段と強化。知事部局と県内四地区の危機管理局に教委が派遣した五人が、地域ごとに、よりきめ細かな対応をする。高校は地域とのつながりが薄く、専用の防災ノートを作り防災力の底上げを図った。
主に南部沿岸が津波に襲われてきた三重県も、昨年から宮城方式に似た「防災リーダー」を養成中だ。全公立校に置き、学校と地域防災のけん引役にしていく。
学校防災は、つまるところ地域防災、である。現に震災では多くの学校が避難所と化した。
「地域との連携が一番の役目」と、宮城県南三陸町の中学の防災主任。住民との避難所運営訓練を再三繰り返す。教訓をむだにせぬ適切な避難行動には、日ごろの意識の共有が欠かせないからだ。
宮城方式もよい。備えのタクトをだれが振るか。互いに参考にし合い、脅威に立ち向かいたい。
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