HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 12 Mar 2013 21:21:10 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞: 人がそうであるように、土もまた、かけがえがない。私たちの…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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 人がそうであるように、土もまた、かけがえがない。私たちの中に、過去の時間が記憶となって流れるように、土にもまた悠久の時間が、封じ込められている▼土を耕したことがある人なら、分かるだろう。本当に豊かな土をつくるのが、いかに大変か。鍬(くわ)を入れ続け、際限なく石を拾う。ほかほかした畑は、何世代もの人が慈しむように土とつきあって初めて、できる▼古く「慈(いつく)しむ」「愛(いつく)しむ」は、「うつくしむ」と言った。そこから「美しい」という言葉も生まれたという。美しい田園風景とは、人間がさまざまな絆でつながりつつ、大地に愛情を注ぎ続けたことで、出来上がった情景だ▼そんな福島の大地が二年前、原発事故で汚され、なお十五万人が避難を強いられる。きのう、住民ら千六百五十人が国や東電を相手取って、一斉に提訴した▼福島地裁に出された訴状に、こうある。<一人で生きてきたものは一人としていない。その結びつきの場が、美しい福島であった><原告らが求めるものは、第一に、もとの美しい福島、ふるさとを返せ、という住民のさけびそのものである>▼農地だけではない。豊かな海も汚された。訴状は老いた漁師の嘆きも伝える。「仕事をしていないから、手の皮がこんなに柔らかくなってしまった」。国と東電は、かけがえのないものを奪われた人々の訴えに、どう応えるのか。

 

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