HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 70229 Content-Type: text/html ETag: "142531d-19af-40da7440" Cache-Control: max-age=1 Expires: Sun, 10 Mar 2013 23:21:05 GMT Date: Sun, 10 Mar 2013 23:21:04 GMT Connection: close
歳月は気まぐれなランナーに似ている。のんびり流しているかと思えば、一転、歩を速めて移ろいもする。ひと続きの時の大河に、私たちのささやかな命は浮き沈み、現れては消える。震災被災者にとって、恐らくは激流のような2年が過ぎた▼いや、時は止まることもある。宮城県名取市の会社員、桜井謙二さん(38)の悲嘆を本紙で読んだ。妻(当時36)と長女(同14)次女(同10)を、マイホームもろとも津波に奪われた▼「みんな復興へと動いている。でも、私は家族を失ったという思いにとどまっています。そんな気持ちを口にすることも難しくなっている」。自宅跡の更地にたたずみ、3人との日々をただ感じているという▼〈そのあとがある/大切なひとを失ったあと/もうあとはないと思ったあと/すべて終わったと知ったあとにも/終わらないそのあとがある〉。谷川俊太郎さんが先ごろ、本紙夕刊「今月の詩」の最終回に寄せた「そのあと」だ。絶望を生き抜く者への励ましが、静かに胸に迫る▼〈そのあとは一筋に/霧の中へ消えている/そのあとは限りなく/青くひろがっている/そのあとがある/世界に そして/ひとりひとりの心に〉。桜井さんの時間も、やがて、ゆっくりと動き始める▼先は見えない。だが見えずとも先はあって、被災者も、寄り添う国民も「そのあと」を生きてゆく。犠牲者は「私たちの分まで」と声をからしていよう。三回忌を区切りにできる人ばかりではないが、今は前を向きたい。