三度目の核実験をした北朝鮮に対し、国連安全保障理事会は新たな制裁決議案を採択した。核とミサイル開発につながる物資と資金の流れを絶つのが目的だ。抜け道を与えてはならない。
これまでの決議では加盟国に制裁を「要請」していたが、今回は「義務」とする条項が増えた。
北朝鮮に出入りする貨物の検査が義務づけられた。核・ミサイル関連が疑われる貨物を積んだ船舶が自国領海に入れば、加盟国は検査をし、拒否されたら入港を禁止する。
核・ミサイル計画に活用されるとみられる北朝鮮の銀行の支店開設を禁ずるよう、加盟国に要請する。北朝鮮外交官の不正行為を監視する条項も新設して、核関連技術や資料、多額の現金持ち運びを阻止する。
最大の支援国である中国も制裁強化に加わった。核不拡散を求める国際世論を軽視できなかった。北朝鮮の核保有を止めなければ、韓国や日本でも将来は核武装論が出て軍備強化に傾く可能性があり、中国自体の安全保障にも影響が出るという判断も働いたのではないか。
制裁の成否を左右するのはやはり中国だ。北朝鮮の貿易の七割以上が対中国であり、食料や原油の多くを依存している。習近平指導部には制裁を着実に実行し、特に輸出品の機械や車両の軍事転用を監視する役割が問われる。
だが、中国の圧力にも限界があり、ジレンマも抱えている。支援を止めれば食料危機が進み、大量の脱北者が中国側に流出する恐れがあるからだ。経済開発など一定の支援を続けて金正恩体制を支えながら、核放棄を迫る政策を維持するとみられる。
北朝鮮の反発はエスカレートする一方だ。朝鮮戦争休戦協定を白紙化し、さらに南北不可侵の合意を破棄すると宣言した。現実味はないとはいえ、核による先制攻撃にも言及した。緊張を高めて米国との交渉を要求する戦略だが、「言葉の戦争」だとしても危険すぎる。偶発的な衝突も起きかねない。いま米朝対話が実現しても、決裂するだけだろう。
周辺国は北朝鮮の暴走も想定に入れて備えたい。米韓両国は定例の合同軍事演習をしているが、北朝鮮に圧力をかけながらも冷静な対応を続けるべきだ。
日本政府は米韓両国との連携を強め、動きがみられる日本海側への短距離ミサイル発射実験への情報交換が必要になる。
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