HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 52439 Content-Type: text/html ETag: "a31cd-18da-4d76cb3fc4a53" Expires: Sat, 09 Mar 2013 03:21:08 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sat, 09 Mar 2013 03:21:08 GMT Connection: close 福島の除染 「1ミリ・シーベルト」が阻む住民の帰還 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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福島の除染 「1ミリ・シーベルト」が阻む住民の帰還(3月9日付・読売社説)

 福島県内の復興を進めるために、まず必要なのは効率的な除染だ。

 約16万人に及ぶ避難住民が、一日でも早く地元に帰還できるよう、政府と自治体が連携し、迅速に作業を進めることが重要である。

 遅れが目立つのは、事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所周辺にある11市町村の除染だ。特別地域として、環境省が直轄で除染作業を実施している。

 このうち本格除染に着手したのは、4市町村にとどまる。はぎ取った表土などの仮置き場の確保、除染対象地の地権者の同意取り付けに難航していることなどが、想定より遅れている要因だ。

 未着手の自治体で避難住民との交渉にあたることも無論、大切だが、最優先すべきは、本格除染が始まった自治体での作業のスピードアップだろう。

 年間被曝(ひばく)線量が20ミリ・シーベルト以下の「避難指示解除準備区域」となっている楢葉町では、昨年9月に本格除染が始まった。家の屋根瓦や雨どい、窓を拭いたり、庭の表土を除去したりする作業が続く。

 環境省は、「避難指示解除準備区域」と、これより年間被曝線量が高い「居住制限区域」の除染を来年度中に終える計画だ。

 それを実現するうえで、最大の障害となっているのが「1ミリ・シーベルト問題」である。

 除染の枠組みを作った民主党政権は元々、国際放射線防護委員会(ICRP)の基準に沿って、年間積算線量が20ミリ・シーベルト未満なら居住が可能との見解だった。1ミリ・シーベルトは、あくまで長期的な目標と位置付けていた。

 ところが、徹底除染を求める地元の要望を受け、達成困難な1ミリ・シーベルトが当座の目標値となった。

 除染の遅れについて、環境省の幹部は「1ミリ・シーベルト問題が大きなネックになっている」と認める。福島県の佐藤雄平知事も、今では「達成できる数値を示してほしい」と政府に求めている。

 2年前の原発事故当時に比べ、放射能のリスクを冷静に受け止める人が増えてきている。

 病院の放射線診断では、1回の被曝量が約7ミリ・シーベルトになることがある。肥満の発がんリスクは200〜500ミリ・シーベルトに相当するという試算もある。

 政府は除染目標を見直し、1ミリ・シーベルトが危険と安全の境界ととらえられている現状を変えていくべきだ。避難住民が安心して元の家に戻れるよう、放射能に関する正しい情報を丁寧に説明するのも、政府の役割である。

2013年3月9日01時55分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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