HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 08 Mar 2013 00:21:08 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:再審取り消し 「異議審」に異議あり:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

再審取り消し 「異議審」に異議あり

 福井の女子中学生殺害事件で、名古屋高裁が元被告の再審開始を取り消した。検察の「異議」を全面的に認めた結果だ。せっかく出た再審の扉を閉ざす「異議審」の手続きに異議を申し立てたい。

 裁判と再審を求める訴えは、複雑な経緯をたどった。事件は福井市で一九八六年に起きた。犯人とされた男性は無実を訴え、一審は「無罪」だった。二審で有罪となり、懲役七年の刑が確定した。

 男性は出所後に裁判をやり直す再審を求め、名古屋高裁金沢支部は再審開始を決定した。だが、検察が「異議」を申し立てた結果、再審の扉が閉ざされたわけだ。

 同じ証拠に基づいているのに、なぜ裁判官によって、有罪か、無罪か変わるのか。高裁レベルで、いったん再審開始と決めたのに、なぜそれが取り消されるのか。

 理由は簡単だ。この男性が犯人だとする決定的な直接証拠が存在しないからだ。犯行そのものを目撃した証言はないし、物証もない。証言を裏付ける客観的な証拠も乏しい状態だった。

 だから、有罪とした裁判官も再審を取り消した裁判官も、積み上げられた間接証拠だけで判断している。具体的には男性の知人らの証言だ。「事件当時、服の胸元に血を付けた、この男性を見た」「現場近くまで男性を車で運んだ」という証言もあれば、元暴力団組員は「男性に犯行をほのめかされた」とも述べていた。

 だが、供述したある一人は本紙に「自分の覚せい剤容疑を見逃してくれると警察に言われ、うその証言をしてしまった」と語っている。取調官の誘導は明らかだ。他の証言も供述が捜査の過程で、変遷していることがわかっている。それでも裁判官は供述だけに寄り掛かって結論を出した。

 最高裁は一〇年に「被告が犯人でないとしたら、説明のつかない事実が間接証拠に含まれる必要がある」と新基準を出した。果たして、今回の場合、この男性しか犯人でありえないと言い切れるだろうか。疑問を覚えはしないか。

 再審開始が決定されても、異議審でそれが覆されたのは、名張毒ぶどう酒事件でも同じだった。決定的な証拠がないなら、裁判所は再審を求める人に有利に証拠を読み解くべきではないのか。検察も異議審ではなく、再審過程で有罪を主張すればよい。

 確定判決を覆すのは、司法の恥ではない。むしろ無実の人を救う司法の方に信頼を寄せるだろう。

 

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