HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 70746 Content-Type: text/html ETag: "184432d-1c8a-9700c280" Cache-Control: max-age=1 Expires: Wed, 06 Mar 2013 21:22:05 GMT Date: Wed, 06 Mar 2013 21:22:04 GMT Connection: close
季節は違うのだが、〈百人の蕎麦(そば)食う音や大みそか〉という古川柳がふと頭に浮かんだ。浮かんだのは、きのうの通勤電車の中だった。ここまで読んでピンときた方もおられようか。思い切って大げさに、その場のさまを表せば、〈百人の鼻すする音や花粉症〉となる▼新聞が読める程度に混む車内で、両隣と背後に立った人がひっきりなしにズズとやっていた。あの列車だけで、ずいぶん多く「悩める者」を運んだことだろう。筆者もその一人だが、春の憂鬱(ゆううつ)は関東から西でいよいよ盛りに入ったようだ▼1日の最高気温が15度を超すと、飛散量は一気に増える。テレビの情報番組も「花粉もの」が盛りだ。杉林から煙のように舞い上がる。春の命の壮観だが、悩める者には敵軍の総出撃にしか映らない▼当方はいつも1月末から身構える。今季、鼻は予防薬が奏功するも目は苦戦ぎみ。〈目のふちが世界のふちや花粉症〉山口優夢。涙で視界を潤ませながら、おそらくは「同士」による、あわれを誘う一句を思い出したりする▼今は涼しい顔の人も、油断しない方がいい。当方も8年前までそうだった。ある年ある日、鼻がムズムズする。仲間入りのサインである。無症状でもなるべく花粉は吸わないのが賢明らしい▼春めいたきのう、公園で辛夷(こぶし)の花芽がびっしり光っていた。田打ち桜の名を持つ花は一樹を白く飾るように咲く。花粉症は恨めしいが、春はやはり待ち遠しい。百の花々の北へのリレーも、号砲の鳴る日はもう近い。