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安倍首相は近く、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉への参加を表明する見通しだ。日本と欧州連合(EU)、日中韓3カ国、東アジア全体の各通商交渉も順次始まる。世界貿易機関[記事全文]
沖縄の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に向けた手続きが、動き出そうとしている。防衛省は名護漁協に埋め立て工事への同意を求める要請書を提出した。同意が得[記事全文]
安倍首相は近く、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉への参加を表明する見通しだ。
日本と欧州連合(EU)、日中韓3カ国、東アジア全体の各通商交渉も順次始まる。世界貿易機関(WTO)交渉が停滞するなか、日本の経済連携政策は大きな節目を迎える。
首相は施政方針演説で「我が国は受け身であってはいけない。ルールを『待つ』のではなく、『創る』国でありたい」と強調した。
その言やよし。世界第3位の経済大国として、通商自由化を引っ張るぐらいの気概でのぞんでほしい。
一連の交渉で中心となるのは、目標とする自由化度が格段に高いTPPだ。
2月の日米首脳会談で「TPPでは全ての関税を撤廃するとあらかじめ約束するわけではない」と確認したのを受け、与野党の議論は「どれだけ聖域を確保できるか」に傾きがちだ。
だが、聖域確保にとらわれてばかりいては、他の分野で思わぬ譲歩を迫られるなど、国全体の利益を損ないかねない。
特定の産業や業界に引きずられず、利害得失を冷静に判断すべきだ。
その関税交渉で、日本は世界の潮流から取り残されつつあることを忘れてはならない。
これまで13の国・地域と経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)を結んだが、自由化度の目安となる「10年以内の関税撤廃を約束した品目」の比率は、最も高い日比EPAで88%どまり。米国や韓国、中国がここ数年結んだ主なFTAでは95%を超える。
関税上の約9千品目のうち、日本が手をつけてこなかった「聖域」は940品目に及ぶ。「コメ」だけでその加工品まで含め58あるのをはじめ、農林水産分野が約850。鉱工業品も100近くある。
TPP交渉ですべてを守ることは不可能だ。どの品目を「聖域」にするかという内向きの姿勢に陥らず、自由化を迫られる分野や品目については、効果的な支援策を並行して打ち出すことも必要だろう。
そのためにも、交渉に当たっては省庁の縦割りを徹底的に排さねばならない。
民主党政権では、TPPを巡って農林水産省が関税撤廃時の1次産業の生産減少額を、経済産業省はFTA戦略で韓国に後れを取った際の国内総生産の目減り額を、それぞれ試算した。
こんな混乱を二度と繰り返さないよう、首相官邸がリーダーシップを発揮してほしい。
沖縄の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に向けた手続きが、動き出そうとしている。
防衛省は名護漁協に埋め立て工事への同意を求める要請書を提出した。同意が得られれば、安倍内閣は3月中にも、仲井真弘多(ひろかず)沖縄県知事に辺野古の埋め立て申請をする方針だ。
事務的な手続きを、淡々と進める姿勢である。
だが、沖縄県民の圧倒的多数が県内移設に反対しているなかで申請しても、かえって問題をこじらせるだけではないか。安倍首相はよく考えてほしい。
首相は、施政方針演説で「普天間飛行場の固定化はあってはならない」と強調した。住宅地に隣接する普天間の危険性を考えれば、移転をはかるべきなのは言うまでもない。
ただ、私たちが社説で繰り返し指摘してきたように、県内移設は現実味を失っている。
県と県議会、全市町村長と全市町村議会が辺野古案に反対し、県外移設を求めている。首相に普天間の閉鎖、撤去を求める「建白書」も提出した。
垂直離着陸機オスプレイの強行配備や、米兵による相次ぐ犯罪も重なって、県民の国への不信は頂点に達している。
だからこそ、首相もきのうの国会答弁で「沖縄の方々の声に耳を傾け、信頼関係を構築しながら移設を進めたい」と語ったのではないか。
埋め立て申請をすれば、この発言と矛盾する。
首相が移設に向けた手続きを急ぐ背景に、米政府への配慮があることは間違いない。
先の日米首脳会談で、オバマ大統領は、環太平洋経済連携協定(TPP)とともに、この問題の進展にも関心を示したという。
「日米同盟は完全に復活した」と宣言した首相にしてみれば、早期に同盟のトゲを抜きたいとの思いだろう。
だが、このままでは作業の進展を演出するだけのアリバイ作りに終わり、普天間の固定化につながりかねない。
鳩山政権が「最低でも県外」を掲げて迷走したことからも分かるように、県外移設が難しいことは確かだ。
それでも、日米同盟が重要だというなら、日米両政府で辺野古に替わる選択肢がないか改めて検討すべきだ。本土への基地の分散移転も、真剣に探るべきではないか。
民意の支えなくして、安全保障は成り立たない。
見切り発車の愚を犯すべきではない。