HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 52345 Content-Type: text/html ETag: "33977-18f5-4d6f3e7d9ba67" Expires: Sun, 03 Mar 2013 03:21:08 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sun, 03 Mar 2013 03:21:08 GMT Connection: close 被曝健康評価 不安を和らげる対策が重要だ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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被曝健康評価 不安を和らげる対策が重要だ(3月3日付・読売社説)

 東京電力福島第一原子力発電所事故による()(ばく)で健康影響が出る恐れは極めて小さいだろう。

 この事故の健康リスクは低い、と評価した報告書を世界保健機関(WHO)が公表した。「一般住民のがん発生数が平時より増えることはないだろう」とも述べている。

 これまでの国内外の調査とも合致する評価結果と言えよう。被災者の不安軽減につなげたい。

 WHOは、福島県などの放射線測定データなどから住民の被曝線量を推計し、これに基づいて、健康リスクを算出した。

 留意すべきは、WHOが「過小評価にならないようにした」という点だ。例えば避難区域の住民が事故後4か月間、避難せずに汚染された物を食べ続けた、と実際はあり得ない条件を想定した。事実上、過大な評価となっている。

 政府などの調査では、ほとんどの住民の被曝線量は10ミリ・シーベルト以下と推計している。胸の精密放射線診断1回で浴びる程度の量だ。WHOの値はその約5倍になる。

 このため、健康リスクは一部地域で平時より高く表れている。

 避難区域に含まれる福島県浪江町では、1歳女児が16歳までに甲状腺がんを発症する確率が、平時の0・0040%から、約9倍の0・0365%になった。

 それでも、対象年齢の女児が100人とすると、事故後の患者数は1人に満たない計算である。

 一般に日本人の2人に1人はがんになる。最大の原因は喫煙や食生活だ。被曝の影響はデータとしては検出できないほど小さい。

 政府は「リスクが高くなる」という評価が独り歩きせぬよう情報提供に努めるべきだ。加えてWHOが、住民の不安を重視して「精神的、社会的な配慮が必要」と強調したことにも対応すべきだ。

 特に、被曝した可能性がある人たちの健康調査は重要だろう。

 福島県などが取り組んでいる住民の健康調査は、思うように進んでいない。前提となる個人の被曝線量は、対象となる住民の約2割しか把握できていない。

 原子力規制委員会は近く、政府の支援を強化して、健康調査を加速するよう求める方針だ。支援の体制作りを急がねばならない。

 不安軽減には、除染目標値の年間「1ミリ・シーベルト以下」の見直しも必要だ。危険と安全の境界が「1ミリ・シーベルト」と受け止められている。

 福島県も避難住民の帰還の障害になっているとして、政府に新たな目標設定を求めている。政府は早急に検討を始めるべきだ。

2013年3月3日01時48分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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