HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 64849 Content-Type: text/html ETag: "12b6863-19eb-b08ff40" Cache-Control: max-age=4 Expires: Fri, 01 Mar 2013 21:21:11 GMT Date: Fri, 01 Mar 2013 21:21:07 GMT Connection: close
「五里霧中」はよく知られた四字の熟語で、親切な辞書には「五里夢中は誤り」と注意書きがある。さらに丁寧な辞典には「ごり・むちゅう」と区切って読むのは誤り、とある。正しくは「ごりむ・ちゅう」だと。中国の「後漢書」に、その五里霧なるものは出てくる▼張楷(ちょうかい)という在野の学者は、道術を使って五里四方に濃霧を発生させた。人を避けたいときは霧の中に姿を隠したそうだ。時は流れて、その張楷も驚くような中国の大気汚染である。一昨日は今季初の黄砂も加わり、北京の街は黄色く沈んだ▼視界不良で高速道路が閉鎖され、屋外の活動を控える指示も出された。北京だけでなく、汚染の深刻なエリアは日本の面積の数倍におよぶとも聞く。現代の公害の脅威は、五里霧の故事の比ではない▼風に乗って、とばっちりは東へ進路をとる。汚染物質に黄砂がまじり、迷惑の二重奏に韓国も戦々恐々らしい。スギ花粉に作用して症状がひどくなる恐れもあるそうだ▼終戦の2年後、中秋の名月を眺めて、小欄は「来年の今月今夜はモクモクと出る煙突の煙で思いきり曇らせてみたい」と書いた。焦土からの復興を願ってのことだ。どの国にも、昇る煙が繁栄の証しのような発展途上の時期はある▼その後の日本の公害と反省は、説明不要だろう。中国は世界第2の経済大国になった。自他の国の環境と健康への責任を、五里霧に隠れて頬被(ほおかむ)りでは許されない。藍天(らんてん、青空)を守るべし。なりふり構わぬ発展から、舵(かじ)を切って。