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メンデルスゾーンの第4交響曲は、晴朗さにみちた旋律でファンが多い。「イタリア」と名づけられた曲の出だしは、あの国の紺碧(こんぺき)の海や、ぬけるような青空を思わせる。曲名を聞いてメロディーが口をつく方もおいでだろう▼作曲家はドイツ北部に生まれた。南欧を旅して光を浴び、情緒に心洗われるさまが曲から伝わる。その青空が、今はかき曇り、欧州に不安の雲をなびかせている。総選挙の結果、イタリア政治は袋小路に陥ったようだ▼財政危機を抱えて緊縮策を進めてきたが、失業や不況に国民はあえいだ。不満の海に、ベルルスコーニ前首相率いる勢力が「露骨なばらまき公約」を投げ込んだ。たちまち政情は混沌(こんとん)となり、選挙がすんでも新首相を選べない状態だという▼市場は即座に反応してユーロが売られ、円は大きく高値に振れた。グローバル時代の地球は狭い。アベノミクスがイタリアの暗雲でしぼむやもしれない。影響は真っすぐに海を越える▼思えば、おおらかで緩い南欧的な情緒とは対極の方向へ、世界は突っ走っている。ギリシャやイタリアを「キリギリス」にたとえながらも、では「アリ」がそんなに偉いのかと問うてみたい気持ちが、胸の内になくもない▼とはいえ、在日20年というイタリア人建築家グラッセッリ氏が本紙で述べていた。「『最後は何とかなるだろう』という根拠のない楽観主義もどこかにあって、危機に陥った」と。イタリアに限らない。生き方と気の持ちようの難しい時代である。