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ことば遊びには、凝ったものがいろいろある。たとえば次の一句、〈昼からはちと影もあり雲の峰〉の17文字には7種の小さな生きものが隠れている。答えをすぐ言うのも何だが、順に「蛭(ひる)、蚊(か)、蜂(はち)、蜥蜴(とかげ)、蟻(あり)、蜘蛛(くも)、蚤(のみ)」とならぶ。うまく考えるものだ▼寒さの中にも、陽気に誘われて虫たちが穴を出る二十四節気の啓蟄(けいちつ)は近い。虫といってもいろいろで、もとより蚊や蚤は歓迎されまい。加えて今年は新たな心配が生じてきた。ダニの一種マダニが広める感染症で、国内で4人の死亡が確認されたという▼マダニは「真壁蝨(まだに)」などと書く。虫偏の生きものの漢字表記は“迫力”のあるものが多い。これも、見ただけでたじろいでしまう。室内のイエダニと違って野山などに潜み、人に食いついて血を吸う▼筆者も昔、山でやられた。ひざの横に黒いものを見つけたが、かさぶたと思って放置した。だが、むずむずと微(かす)かに痛く、日々膨らんでいくような気がしてよく見ると、虫の足がもぞもぞ動いていた▼こんなとき、無理に取るのはよくない。ダニではないがヤマビルをむしり取って、あとが化膿(かのう)した山仲間がいた。リアルな一句が歳時記にある。〈壁蝨(だに)の口肉に喰(く)い込み根づきおり〉北山河。取りにくいときは病院に行くのが賢明らしい▼駅売りの新聞に「殺人ダニ」と見出しが躍っていた。新型インフルエンザも地震もそうだが、むやみに恐れず「正しく怖がる」ことが大切だ。春の野を歩く前に、知識と予防策で身を固めて。