スギ花粉の飛散が始まった。春は待ち遠しいが、患者にとっては気の重いシーズンでもある。今や「国民病」といっていい花粉症の対策を十分に講じ、憂うつな季節を乗り切りたい。
とうとう花粉が飛び始めた。既にくしゃみや鼻水などの花粉症の症状に悩まされている人も出ている。環境省によると、飛散量は昨年に比べても、例年と比べても多くなりそうだ。
とりわけ関東や中部地方はかなり多い。北関東では昨年比約三〜五倍、東京都は約五倍になる。岐阜県は昨年並みだが、三重県や静岡県は二倍前後、愛知県は七倍近い飛散量と予測している。
飛散は三月にピークを迎え五月の連休のころまで続く。
大量飛散は昨夏の猛暑でスギ花粉の生育が進んだためだ。地方によっては雄花をつけるまで成長したヒノキの花粉も加わる。今年の花粉症は“警報”レベルだろう。
国民の約三割が花粉症といわれる。つらい季節を乗り切るには、対策の知識を身に付けたい。
花粉の侵入を防ぐメガネやマスクの着用はもちろん、見落としがちなのは帰宅時に家に入る前に服や髪の毛に付いた花粉を払うことである。日課にしたい。
治療の考え方は変わってきている。以前は飛散前から治療薬を服用する予防投与が広まった。最近は服用すればすぐに効果が表れる薬も登場している。市販もされており選択の幅は広がった。
ただ、重症度や症状の種類によって使う治療薬が違ったりする。毎年のことと侮らず、最新の治療情報をチェックし、症状に合った治療を受けることが大切だ。
スギ林は戦後、木材増産で造林を進めて増えた。林野庁は十四年前から花粉対策を進める。都道府県と協力して無花粉や少花粉のスギの苗木を生産・植林している。
期待が高まるが、苗木の生産量は昨年度で百四十八万本である。全体のわずか9・4%だ。四年後には、年間に植林される苗木の約六割に当たる一千万本への増大を目指すが道のりは遠い。
花粉症の時期はレジャーや外食など個人消費を落ち込ませる。大量飛散した年はそうでない年に比べ約五千億〜七千五百億円押し下げるとの試算もある。
安倍政権は経済対策に道路整備などだけでなく、こうした対策も求められるのではないか。
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