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ロシアのウラル地方に飛来して爆発した隕石(いんせき)は世界を驚かせた。「鳥か! 飛行機か! いや、隕石だ」。スーパーマンのフレーズをもじった見出しをつけて、はしゃいだ感じの英字紙もあった。被害は小さくないものの、死者が出なかったのは不幸中の幸いだった▼「好きなもの いちご 珈琲(コーヒー) 花 美人 懐手(ふところで)して宇宙見物」は物理学者寺田寅彦のざれ歌だが、その場の人はとても「懐手で見物」の余裕などなかっただろう。流れ星ならともかく、大宇宙はときに、とんでもないものを我らが星に落としてよこす▼地球をかすめる小惑星の話を15日の小欄に書いた。その最接近が刻々と迫るなか、隕石は青い空を切り裂いた。双方に関連はないそうだが、それならそれで、計ったような偶然に宇宙の深遠感はいや増す▼音速の50倍という速度で飛んできた物体の持つ力も、想像を絶する。米航空宇宙局の推算によれば、長崎型原爆25個分のエネルギーで大気圏に突入したという。「もう一つの太陽のようだった」という目撃談は誇張ではあるまい▼天が落ちてくるのを心配する「杞憂(きゆう)」の故事を笑えなくなった、という人もおられよう。だが怖いのは自然より人間で、某国が血道を上げる弾道ミサイルの方が、このさき宇宙から降る脅威としてはむしろ現実的だろう▼天に星、地に花、人に愛という。されど天・地・人のうち、ひとり「人」だけが利害や欲で互いを痛め合っている。落ちてきた訪問者、人界を何と見ることだろうか。