北朝鮮の農地の生産性の低さは、施肥不足が大きな原因らしい。全国的に肥やし(堆肥)の生産に躍起になっている北朝鮮で、「ふん泥棒」が横行していたと、本紙「平壌ウオッチ」が伝えていた▼農村部ではもみ殻や家畜のふんを利用。都市の住民にも「農村支援」としてノルマがあり、平壌では泥炭が主原料になるという。地方都市では、アパートごとに共同トイレを設けて肥だめにして、たまった人ぷんに落ち葉や石灰などを混ぜる▼ふん泥棒が出没するのは、どうしてもノルマに届かない時らしい。供出量が足りないと、食糧の配給が削られる。住民は肥だめを守るために警備に立つなど、自衛策を講じる。「何も食っていないのにたくさん出るわけがない」。盗みを働く側の悲しい言い訳である▼北朝鮮がきのう、金正恩体制になって初めての地下核実験を実施した。通算三度目の核実験の強行は、さらなる経済制裁や国際社会から一層孤立することも覚悟の上だろう▼昨年、穀倉地帯でありながら多数の餓死者が出たという黄海道の食糧難は、軍部と首都に回すため、脱穀したコメを大量に奪い取られたことが原因だった−という報告書を北朝鮮をウオッチしているアジアプレスがまとめた▼「王朝」を守る武器が欲しくてたまらない三代目やその取り巻き連中の目には、飢えに苦しむ民衆の姿は映らないらしい。