HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 05 Feb 2013 03:22:29 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞: 明治期を代表する思想家の高山樗牛(ちょぎゅう)は、結核と…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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 明治期を代表する思想家の高山樗牛(ちょぎゅう)は、結核と闘いながら、自らの思想を研ぎ澄ました。「われ病にかゝりてこゝにまことの人生を見そめき」(『わが袖の記』)との言葉には、大病を得たことで本当の人生を学んだという真摯(しんし)さがにじんでいる▼一度は大病を克服した十二代目市川團十郎さんも、「おまけの命」をもらった恩返しをしたいという気持ちが謙虚な人柄に磨きをかけ、芸を一層の高みに昇華させたように思えた▼悔しさ、無念さ、残念さ、虚(むな)しさ、淋(さみ)しさ、惨めさ…。團十郎さんは二〇〇四年に白血病を発症した時、「あらゆる日本語の語彙(ごい)を集めてもまだ足りないような気分で、ただ現実をながめるだけだった」と自著『團十郎復活』で振り返っている▼抗がん剤治療などでいったんは寛解したが、翌年に再発。無間地獄をさまようような、と表現した壮絶な治療の果てに、妹から骨髄移植を受けて〇九年に完全復帰を遂げた▼今年四月からの新・歌舞伎座こけら落としの出演に期待が高まっていた團十郎さんが急逝した。中村勘三郎さんに続き、歌舞伎界は巨大な柱を失った▼「歌舞伎界、そして歌舞伎を取り巻く日本の伝統文化を改めて考え直す心構えが必要だと思う」。歌舞伎座の建て替えを機にそう訴えていた。強烈な「目力」で魅了した十二代目が、新しい舞台で見えを切る日はやって来なかった。

 

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