<石の上にも三年>という諺(ことわざ)に対応する英語の表現は、<転がる石はこけむさず>で、絶えず職業を変えるのは賢明ではないという戒めは万国共通、と先日の小欄で書いたところ、日本ことわざ文化学会の時田昌瑞副会長からお便りをいただいた▼<転がる石はこけむさず>はギリシャ・ラテン語に由来する古い諺だが、英国と米国では逆の意味で使われていて、米国では動いていることを肯定的にとらえ、転職を重ねることを良しとする意味で使われているそうだ▼近年では米国流が優位であるとのご指摘だった。転職=キャリアアップという米国の価値観が諺の世界にも浸透しているのだろうか▼米国流に全面同意はしないが、同じ組織に長く居続けると、視野が狭くなることがある。組織と社会の常識が懸け離れていることに気付かない時、深刻な問題が起きる▼原子力規制委員会事務局のナンバー3の審議官が、敦賀原発の活断層評価報告書の草案を公表前、日本原子力発電の幹部に漏えいしていたことが明らかになった▼「産学官」がなれ合う原子力行政を終わらせるために設立された組織が、半年もたたずにこの体たらくだ。深刻なのは規制委に事の重大さの認識が薄いことだ。国会事故調に糾弾された「事業者の虜(とりこ)」がこんなに早く顔を見せるとは思わなかった。「個人の問題」などと片付けられるはずがない。