HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 01 Feb 2013 16:32:15 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:柔道の告発 体質そのものを見直せ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

柔道の告発 体質そのものを見直せ

 柔道女子の暴力告発問題は、スポーツ界が抱えるゆがんだ体質の一端を象徴している。スポーツの本質は何か。文化としてのスポーツをどうとらえるか。あらためて見つめるべき時だ。

 ロンドン五輪に出場した日本代表をはじめとする柔道女子のトップ選手十五人が、代表監督やコーチによる暴力、パワーハラスメントを告発するという前代未聞の出来事が起きた。告発では、強化合宿で選手を殴ったり、故障中の選手に大会出場を強要するなどの状況が続いていたとしており、全日本柔道連盟もそれを確認している。まさしく異常事態と言うほかはない。

 ただ、そんな行為がまかり通っていたということも、一般的には「ああ、やっぱり」と受けとられているのではないか。以前は大会でも、衆人環視の中で指導者が平手打ちをする行為などがしばしば見られた。大阪・桜宮高の自殺事件からもわかるように、スポーツ指導での暴力、体罰は依然として存在しており、しかもけっして例外的なことではなさそうだ。となると、それは日本のスポーツ界全体の問題と言わざるを得ない。

 本来、スポーツとは幅広いものだ。競技の目的は勝つことだが、最終的な勝負に至るまでのさまざまな過程や、そこから得る多様な経験こそがスポーツをひとつの文化として成り立たせているのもまた言うまでもない。幅広い意味で楽しみ、学ぶのがスポーツの本質なのである。

 ところが日本のスポーツ界、指導者の多くは、長らく勝負の結果だけしか見てこなかったように思える。あるいはスポーツを就職や進学の手段としてのみとらえ、文化の視点から見る意識が乏しかったようにも感じられる。体罰や暴力が相次いで明るみに出たのは、そんな古い体質がいっこうに消えていない状況の象徴に違いない。

 このことは選手も含めたスポーツ界すべての責任と言うべきだ。五輪でのメダル数にこだわり、国を挙げてのエリート強化を訴えるスポーツ界。その一方で真のスポーツ文化の醸成は置き去りにされがち。そうした体質そのものが、いまもなお暴力を生む土壌となっているのは否定できない。

 スポーツがかつてなく注目を集め、もてはやされる時代。しかしその裏のゆがみもこうして表に出てきている。五輪代表選手まで巻き込んだ告発問題は、そのことを真摯(しんし)に、かつ根本的に見直す機会としなければならない。

 

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