HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 02 Feb 2013 02:21:52 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞: 噺(はなし)家の古今亭志ん朝さんは、鰻(うなぎ)を食べな…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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 噺(はなし)家の古今亭志ん朝さんは、鰻(うなぎ)を食べなかった。一家はみんな鰻好きだったが、出前を取っても、志ん朝さんは口にしない。だから姉の美濃部美津子さんは、嫌いなんだろうと思っていた(美濃部さん著『おしまいの噺』)▼鰻が嫌いな方は別として、環境省がニホンウナギを「絶滅危惧種」に指定したと聞いて、憂鬱(ゆううつ)になった人が多かろう。高騰でなかなか口にできなくなったが、鰻丼が「絶滅危惧食」になったようで、何とも寂しい▼しかし、その実態を知れば仕方ないことだ。鰻の稚魚シラスウナギは、五十年前に比べ四十分の一ほどしか獲(と)れなくなった。稚魚がいなくなれば、養殖もできない▼ニホンウナギの生態は謎だらけという。日本から二千キロ離れたマリアナ諸島沖で卵が初めて採取されたのも、つい三年前。海と川の偉大な水のめぐりの中で生きる鰻のことをろくに知らぬまま、日本人は食い尽くしてきた。専門家は「もう取り返しのつかない状態かも」と警鐘を鳴らす▼志ん朝さんは、本当は鰻が大好物だった。けれども自分が熱心にお参りする虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)の使いとされるのが、鰻。十九歳の時に芸の上達を祈願して、鰻断ちをした。そのまま逝った弟の霊前に、美津子さんは鰻を供え、「ずっとがんばったんだね」と声を掛けたという▼鰻のいない日本。そうなっては希代の落語家も、あの世で笑えまい。

 

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