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寒のゆるみがうれしいこの時期、小欄にも暖を求めるお便りが届く。心がほっこりする話をもっと読みたいと。百も承知ながら、読者に先を越されることがままある▼東京で広げた声欄に「ピザ屋さん、ごめんなさい」があった。首都圏が「大雪」にあわてた成人の日、さいたま市の山口ひかるさん(10)は宅配ピザを頼む。「時間は約束できません」と言われたが、お母さんに注文してもらった▼この少女を後悔させたのは、長針が二回りした待ち時間より、配達員の姿だった。全身びちょびちょ、震える赤い手でお釣りを数えている。母親は申し訳なさそうに缶ビールを手渡し、娘もとっておきの10円菓子を差し出した。投稿は「お兄さん、今度は天気のいい日にたのむからね」と結ばれる▼届けてなんぼの宅配サービスに、客の心遣いは無用かもしれない。それでも、女の子は少し大人になり、若者は時給を超えた出会いを得た。雪道がもたらした寒くて温かい話。冷えたピザは、オーブンでおいしく生き返ったそうだ▼〈クレヨンで描けば氷もあたたかい〉あべ和香(わこう)。寒いだけ、冷たいばかりの冬ではない。雪の夕、初対面の玄関にともった豆電球が、やがて投書欄を照らす。人が触れ合って生じる熱は長持ちだ。凍える記事が多い中、ほっとする話は胸に染み、内なるオーブンに火が入る▼春隣(はるとなり)の週末ではあるが、予報は気まぐれな三寒四温である。いましばらく、心の筆記具をクレヨンにして、季節のせめぎ合いを見守りたい。