自民、公明両党が政権奪還後初となる二〇一三年度当初予算案を決めた。大胆な金融政策に続き、機動的な財政出動を目指したものだ。公共事業に偏重した財政規律や弱者配慮の面で疑問が残る。
税収見込みより新規の国債発行額が多い「異常事態」は四年ぶりに解消した。民主党政権時代の「政策的経費の七十一兆円枠」も維持した。見かけは財政規律に目配りしたように受け取れる。
しかし、決めたばかりの一二年度補正予算案と合わせ「切れ目のない十五カ月予算」との政府説明に従えば、予算規模は百兆円超、新規国債も四十八兆円を超えて借金膨張に歯止めがかかっていないのが実態である。税収見込みは四十三兆円だ。
当面は景気回復を優先して、歳出を拡大させるのはやむを得ないとしても、それが公共事業ばかり大盤振る舞いなのは明らかに問題だ。民主党政権は公共事業関係費を年々削減してきた。自民党が政権復帰した途端に、それが拡大に転じ、当初予算では15%増、補正を合わせると七・七兆円にまで膨張したのでは「コンクリートから人へ」から「コンクリートだらけ」になりかねない。急を要する事業ばかりではあるまい。
安倍政権の経済政策で最大のリスクは金利の思わぬ上昇である。国債発行増に歯止めがかからないと市場が疑念を抱けば、国債が売られ金利が上がりかねない。そうなれば利払い費の増加で財政は危機的状況に陥ってしまう。
所信表明演説で安倍晋三首相は「中長期の財政健全化に向けて基礎的財政収支の黒字化を目指す」と述べたものの、具体的な道筋には触れなかった。現状は「国債の元利払い」と「地方交付税」分しか税収では賄えず、社会保障など肝心の政策経費は新たな借金で賄わざるを得ない。収入がローン返済と仕送りに消え、日々の生活費は借金でということだ。
黒字化のためには財政構造を根本から変えなければならないはずだ。景気を回復させて税収を増やしていくと同時に、歳出規模を大胆に圧縮する必要がある。
ところが予算案で“大なた”を振るったのは、「自助」を名目にした生活保護の見直しだった。困窮者の最後の安全網である「生活扶助」に切り込んだのである。実施は参院選後の八月からというのも推して知るべしである。削られるべきは公共事業や、十一年ぶりに増額の防衛費ではなかったか。政権の目指す方向が表れている。
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