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通常国会が週明けに始まる。自民、公明両党の圧勝で終わった総選挙をへて、与野党の論戦がいよいよ再開する。夏には参院選がある。参院で自公が過半数を占め[記事全文]
卒業の季節を前に、公立校の教職員の退職が相次いでいる。公務員の人件費削減で退職金が下がるよりも先に辞め、損をしないようにしようという「駆け込み退職」である。[記事全文]
通常国会が週明けに始まる。
自民、公明両党の圧勝で終わった総選挙をへて、与野党の論戦がいよいよ再開する。
夏には参院選がある。参院で自公が過半数を占めれば衆参のねじれは解消し、巨大与党の政策実行力が一気に強まる。逆に野党はさらに弱体化し、政治の緊張感は薄まりかねない。
この国会での論戦は、今後の政治を左右する参院選の前哨戦でもある。
安倍政権は経済政策を中心に着々と歩を進めている。なのに民主党、日本維新の会など野党の動きは鈍すぎないか。
安倍政権の政策を厳しくチェックし、批判すべきは批判し、協力すべきは協力する。一刻も早く態勢を立て直し、政権交代の時代にふさわしい、建設的な野党の姿を示さねばならない。
論点には事欠かない。
「アベノミクス」が放漫財政を招き、日本の信用を失わせないか。アルジェリア人質事件の教訓をどう生かすか。近隣外交を打開する手立ては。脱原発依存をいかに進めるか。
政権が参院選に勝ってからの課題と想定する憲法改正や、村山・河野談話の見直しなどについても、今からしっかり議論すべきだ。
もちろん、野党が政権の足を引っ張るばかりでは困る。
日本銀行総裁をはじめ、100人以上の国会同意人事の処理が迫られる。与野党で十分な議論ができる環境を整える必要がある。事前に報道された人事案を受け付けない悪(あ)しきルールが廃止されるのは歓迎したい。
違憲状態にある衆参の選挙制度の改革に結果を出すことも、与野党共通の責務である。
夏の参院選から改選数1の選挙区が31に増える。野党がばらばらのままでは圧倒的に不利になる。そのことは総選挙で痛いほど学んだはずだ。
国会運営をめぐっても、政権の動きは素早い。首相みずから維新など野党党首らと個別に会い、協力を求めている。
これに対し、野党共闘に向けた動きは進んでいない。こんな状態で政権チェックの役割が果たせるのか。
野党各党は早く目を覚ますべきである。
政権への対案を示しつつ、論戦を通じて、それぞれがめざす国の姿や社会像を、説得力あるかたちで示す作業を急いでもらいたい。
そうした積み上げのなかで、各党の連携・協力が可能かどうかが見えてくるはずだ。参院選に向けて有権者に判断材料を示すことにもなる。
卒業の季節を前に、公立校の教職員の退職が相次いでいる。
公務員の人件費削減で退職金が下がるよりも先に辞め、損をしないようにしようという「駆け込み退職」である。
いつ辞めるかは先生や職員の判断しだいだが、児童生徒が割を食うのは理不尽だ。自治体は子どもたちに悪影響を生じさせない対策をとる必要がある。
退職金を引き下げるのは、民間企業(従業員50人以上)の水準にあわせるためだ。
2010年度に退職した人の退職金と年金の上乗せ部分の合計額について、人事院が調べたところ、民間の支給額は不況で激減しており、国家公務員より平均で403万円少ない2548万円だった。
そこで、政府はこの1月以降に退職する職員について、段階的に退職金を引き下げ、民間水準にあわせるよう法律を改正。自治体にもこれに準ずるかたちで下げるよう要請した。3段階にわけるため、今回は百数十万円の減額になる。
公務員の給与や退職金は、民間水準を考えて決めるのがルールであり、引き下げは当然だ。
一方で、働き続けると給料を計算に入れても損をする仕組みにすれば、辞める人が出るのは予想できた。「生徒を置き去りにして辞めるなんて」と保護者が驚くのはわかるが、損しても働けと強いることはできない。制度設計の問題が大きい。
進路選びなどの大事な時期である。担当教師が代わるのは、子どもたちにとって望ましくない。教室に大きな影響が出ないようにすることを優先して考えたい。
下村博文文部科学相は「退職者を慰留、説得してほしい」と各教委に求めている。
佐賀県教委は、早期退職した人の大半を臨時任用の制度を使って残した。代わりの先生を雇っても、コストは同じ。短期間で人を探すのも難しい。同じ人を再任したほうが、教育活動に支障が出ないと判断した。
鹿児島県教委は引き下げ開始の時期を4月1日からにした。周知の期間のほか、人事管理や県民サービスへの影響を考えたという。駆け込み退職による混乱を避ける配慮である。
引き下げの時期をこれから議会で決める県も多い。教室が混乱しないよう、制度を工夫してほしい。
この騒ぎで教師不信を募らせる人もいるが、たとえば埼玉や佐賀では早期退職しなかった教職員の方がはるかに多い。
辞めた人にも、どんな事情があったかはわからない。