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海外の任地から降り立ち、入国審査に進む時の「帰郷感」は忘れがたい。冬であれば、あちらでは拝めない高い空が楽しみだった。こぎれいな到着ロビーも、日本語の広告もうれしかった。そうした感慨とは無縁の帰還もある▼アルジェリアでテロに遭った方々が、政府専用機で羽田に降りた。過半は棺(ひつぎ)に横たえられて……。給油地のフランクフルトを経て17時間。この遠さが、熱砂のガス田開発にかけた男たちの、覚悟と情熱を語る▼日揮の社員ら、現地の日本人17人のうち10人が落命した。最後にご遺体が確認され、専用機に間に合わなかった新谷(あらたに)正法(ただのり)さん(66)は同社の最高顧問、出張中の悲劇である。身元確認の決め手が指輪の刻印だったと聞いて、愛妻家に合掌した▼10人を助ける手立てはなかったか。むごい結末を受け、反省と対策が語られている。友好国と通じてテロ情報に強くなる、アフリカ支援を広げる、そして自衛隊に邦人救出を担わせる、などだ▼自衛隊は今、現地の安全を確かめないと出せない。そこで安倍政権は、危なげな地にも送り、邦人を守れるようにする法改正に動くらしい。自衛隊が操る政府専用機の活用は、「普通の軍隊」への露払いにも見える▼むろん、テロ攻撃への対応は企業の手に余る。では米英仏のように、重武装の特殊部隊を待機させておくか。これも論外だ。丸腰と重武装の間に正解があるとも限らない。誰より意見を聴くに値し、述べる権利もあった10人は、祖国から永遠(とわ)の旅に出る。