自民、公明両党が二〇一三年度税制改正大綱を決めた。消費税増税での負担増を考慮し、減税項目が前面に多く並んだ。相対的に低中所得層への配慮が乏しく、不公平感が残るのが問題だ。
やはり、と思わざるを得ない内容である。一四年四月の消費税率引き上げや、「決戦」と位置付ける今夏の参院選をにらみ、自動車取得税廃止や住宅ローン減税の拡充など減税項目が目立つ。そればかりか「道路特定財源」を復活させる方針に至ってはかつての古い自民党への回帰かと受け取られても仕方あるまい。
道路特定財源は、自動車重量税と、ガソリンにかかる揮発油税の税収を財源に、その大半を道路整備に充てていた。しかし、「無駄な道路建設の温床」との批判から麻生政権の〇九年度に、使い道を特定しない「一般財源」に変えた経緯がある。
政権復帰した途端に、それを「先祖返り」させ、道路の維持管理や更新に充てるのでは、地方や特定業界への利益誘導ととられ「自民党は変わっていない」と印象づけるだけである。
自動車取得税の廃止にしても、消費税増税による販売減を懸念する自動車業界への配慮なのは明らかだ。取得税は「地方税」のため、廃止すれば税収減となる地方自治体が困ってしまう。そこで重量税を地方の道路整備などに充てる事実上の特定財源にしたわけだ。業界にも、地方にも配慮したということだ。
なるほど経済再生を最優先に掲げるだけに、雇用や賃金を増やしたり設備投資する企業の法人税を減税する制度など、新しい工夫も見られる。今年末までの住宅ローン減税を延長・拡充するのも景気の下支えになるだろう。
だが、消費税増税が実施されれば、負担増が重くのしかかる低所得者対策は結局あいまいなままだ。生活必需品などの税率を軽くする軽減税率は、一五年十月の税率10%引き上げ時に導入を目指すとしただけである。
対照的に、消費税増税の不公平感を和らげるための富裕層への課税強化では、教育資金の名目で孫一人当たり千五百万円までの贈与を非課税とする「お金持ち」配慮の制度を設けた。
税制は国民生活の重要な基盤となる。政権がどこを向き、どういう社会を目指しているのかがよく表れる。残念ながら、この大綱からは低中所得層の負担感がより増すような不公平感が漂っている。
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