凍(い)てつくような寒い冬の夜道にも、楽しみを見つけたい。空を見上げてみよう。晴れる日が少ない北陸の皆さんには申し訳ないが、オリオン座をはじめシリウスなど冬の星々が、澄んだ大気の中で輝いているのが見える▼今はすばるが南の空に最も高く見える時期だ。<寒昴(かんすばる)天のいちばん上の座に>山口誓子。平安時代の『枕草子』にも「星はすばる。ひこぼし…」とあるように、古くから親しまれている星団である。その名は「統(す)べる星」から来ているという▼農耕の星でもある。<昴まん時粉(どきこ)八合>。そばの名産地の長野や山形に伝わることわざだ。すばるが空の真上に来る時(九月上旬)に種をまけばよく実り、一升(約一・八リットル)の実から、八合(約一・四リットル)の粉が取れる豊作になるという(槌田満文著『四季ことわざ辞典』)▼寒さが最も厳しいとされる大寒を過ぎた。コートで身を守る日はまだまだ続くが、夕暮れ時には日脚が伸びたことにふと気付く▼<日脚伸ぶどこかゆるみし心あり>稲畑汀子。確実に近づく春を感じて、心の中にある防寒のよろいがほどけていくような感じがする。梅の木も小さな赤いつぼみを付けて、寒さが和らぐのを待っているようだ▼大学入試センター試験が終わり、入試はこれからが本番。インフルエンザがまだ猛威を振るっている。受験生の皆さんの健康と健闘を祈っている。