オバマ第二期米政権がスタートした。誰しも歴史的業績を意識するといわれるその就任演説で打ち出されたのはリベラル色の濃い米国像だった。平等社会を通じた米国再生には大いに期待したい。
国論を二分した昨年の選挙戦で問われたのは、小さな政府か大きな政府か、自己責任の社会か支え合いの社会か、一国主義的な外交か協調外交か、という国の根幹に関わる選択だった。
演説はこれまでの融和を呼び掛けるトーンから一転、実行への決意を強く打ち出すものだった。
政府の役割に関しては、「中央政府への懐疑を捨てたわけではない。社会の病弊が全て政府だけで治せるという虚構に屈したわけでもない」と自制を見せながら、「自由な市場は、競争とフェアプレーが保証されて初めて繁栄する」と、その重要性を強調した。
一期目の最大成果とされつつ支持の広がらないオバマケア(医療保険改革法)については、間接的ながら「社会保障は私たちの独創力を奪うのではない。むしろ強化する。リスクを取る自由をもたらし、偉大な国家を実現させるのだ」と、その正当性を主張した。
また、外交問題では「もはや米国だけで世界中の要求に応じることはできない」「地球上どこであれ、強い同盟諸国の錨(いかり)であり続ける」と述べ、協調外交の継続を明らかにした。
いずれも、有権者から二期目の負託を得た結果の大きな指針として評価したい。
オバマ氏は、リンカーン、キング牧師の言葉を引用し、めざすべき平等社会の視野を民族から女性、同性愛者に広げて説いた。移民政策、地球温暖化、さらには銃規制に本腰を入れる方針を明示したことにも注目したい。
保守的価値観と対立するものが多く、議会のねじれ現象を抱えたままのオバマ政権にとって実現は困難を極めるかもしれない。
就任演説に八十万人近い市民が集まったことに見られるように、オバマ氏にはなお根強い個人的な人気がある。国民に直接語りかける手腕は大きな武器だ。経済にも復興の兆しはある。共和党内に、党再建の一環として柔軟路線を模索する動きもある。
本格論戦は、来月の一般教書演説を待って始まろう。「今」という時の切迫性を訴えたキング牧師に倣い、二期目就任の好機をどこまで生かせるか、オバマ大統領の力量に注目したい。
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