HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 23 Jan 2013 21:21:04 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:アルジェリア人質事件 世界はテロを許さない:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

アルジェリア人質事件 世界はテロを許さない

 アルジェリアで起きた人質殺害は世界の許さぬ犯罪である。イスラムテロの根絶に向かって、日本と世界は、より強く、より周到に協調せねばならない。

 今のイスラムテロの源流は、百年前にもさかのぼるだろう。

 オスマン帝国の崩壊後、欧州列強がアラブ、イスラム諸国を分割・統治した。その劣勢、誇りを失った陰りが、イスラム同胞団などを創設させ、民衆の間に浸透していった。

 それは芽吹きを待ったが、こんどは米ソ冷戦の中、軍事政権が続々と誕生。イスラムを掲げつつ、実態はイスラムを抑圧、弾圧する政治を行った。

 今、戦火の中にあるシリア、アラブの春で倒されたエジプトやリビアがその典型である。

◆欧米諸国の二重基準

 そして、それらの独裁政権をかげで支えてきたのが、米欧ロの諸国である。今回事件のあったアルジェリアでは、一九九〇年代、軍部が総選挙で勝ったイスラム勢力を武力でつぶすのを、旧宗主国フランスは黙認、他の欧州諸国、米国も沈黙していた。

 自らは権力を選挙で決める民主主義、暴力ではなく公正な裁きを秩序とする法治を掲げながら、中東では“地域安定”の名の下に暴力的政権を許してきた。

 そういう二重基準を民衆はもちろん見抜いていた。イスラエルは核兵器を持っているのに、なぜイスラムの核はだめなのか。その当否は別としても、民衆が不信と不満を持つのは自然なことだった。

 カイロなど都市の住民は、アメリカのコーラを飲み、ハンバーガーを食べ、ハリウッドの映画を見つつ、そう思い、そう語り合うのである。

◆武力ではなくならぬ

 テロリストの親玉とされたウサマ・ビンラディン容疑者の殺害で、オバマ大統領が「やつを仕留めた」とつぶやき米国がかっさいしても、現実にはテロはなくならず、いや9・11事件のずっと前からテロは頻発していたのである。

 エジプトでは、南部の遺跡ルクソールで日本人十人を含む外国人六十人以上がテロリストに射殺されたことがあった。

 当時のムバラク政権は過激派を多く捕らえていたが、テロは取り締まりを逃れ、南部へ移動していた。鉄道が射撃されると、隠れ場所のないように線路近くのサトウキビ畑を刈り取ってしまったが、それでもテロはなくならない。

 テロは武力では根絶できない、というのは机上の話ではなく、実際のことなのである。

 血縁、部族のつながりは強く、一人が殺されると、その兄弟らがテロリストになりうるのである。

貧困や失業、政治腐敗がテロの温床になる。その通りである。しかし、抜け落ちていたのが民主化だった。

 いち早く気づいた国家は、米国だった。アフガニスタン、イラクと、立て続けに戦争を仕掛ける一方、エジプトなどでは若者らのネット運動を支援していた。ハードパワーとソフトパワー、その両方を使う外交だ。

 そのアラブの春は、まだ不安定である。混乱もしている。

 しかし、冒頭に記したとおり、現代のテロの根が百年前から地に着いたとすると、その根を断つには、西洋のキリスト教世界とイスラム教のオリエンタル世界との対話、理解、融合しか、おそらく方法はないだろう。

 成功例の一つが東西の境界にあるトルコだ。クーデターと政情不安を経たうえ、九〇年代半ば、民主化の進んだイスラム政権を誕生させている。欧州との経済交流は年々盛んになっている。

 アラブの春という民主化は、暴力のパンドラの箱をあけたわけでなく、暴力をなくす確かな道なのである。イスラム社会がイスラムテロを憎むようになることが必要なのである。その支援が、長い目で見て世界の安定、民衆の貧困脱出につながる。欧米諸国、経済発展国の仕事である。

 米欧のテロとの戦いは、たとえば目下、アフリカのマリでフランスが行っている武力支援がある。軍事訓練、武器の補給という方法もあるだろう。

◆軍事支援ではなくて

 しかし日本には、欧米のような軍事介入、軍事支援とは一線を画した、日本ならではの支援があるはずだ。経済、医療、教育、文化さまざまな支援分野がある。テロを許さない協調体制がある。

 テロとの戦いは、残念だが容易には終わりそうもない。テロ情報の国際的共有、ふだんの警護の方法、万一の場合の救出策、それに情報収集の点検強化が必要だ。

 多くの課題を残した今回の事件である。犠牲になった人々の無念にこたえるような貢献を、日本はぜひ果たしてゆきたい。

 

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