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北朝鮮による「人工衛星打ち上げ」に対し、国連安全保障理事会が制裁を強化する決議を採択した。「打ち上げ」を受けた決議は初めてだ。事実上の長距離弾道ミサイル発射実験に対する[記事全文]
体罰が明らかになった大阪市立桜宮高校の入試について、市教委は橋下徹市長の求めに応じ、体育科とスポーツ健康科学科の入試をとりやめる。ただし普通科として入試をする。体育系2[記事全文]
北朝鮮による「人工衛星打ち上げ」に対し、国連安全保障理事会が制裁を強化する決議を採択した。
「打ち上げ」を受けた決議は初めてだ。事実上の長距離弾道ミサイル発射実験に対する、国際社会の強い危機感の表れだ。
追加制裁に慎重だった中国も賛成に回ったことを、北朝鮮は重く受け止めるべきだ。
決議は、北朝鮮がまた弾道ミサイル技術を使った発射や核実験をすれば、「重大な行動を取る」との決意を表明した。
異例の強い表現だ。強制措置を認める「国連憲章第7章」に基づいた、さらに強い制裁などが念頭にある。
にもかかわらず、北朝鮮外務省はすぐに批判の声明を出し、核実験を行うことを示唆した。これ以上、愚挙を重ねることは許されない。緊張を一方的に高めてきたのは北朝鮮だ。強く自制を求める。
北朝鮮は従来のプルトニウムだけでなく、ウラン濃縮による核開発を進めている。
既存の施設でのプルトニウムの抽出活動は止まっており、保有状況を推測できる。だが、秘密裏に進むウラン濃縮は実態をつかみにくい。長く稼働すれば、それだけ兵器用核分裂物質も増える可能性がある。
北朝鮮の核開発は以前と異なる段階に入ったのが現実だ。核実験で、ミサイル搭載可能な核弾頭を手にするような事態を阻止しなければならない。
中国が決議に慎重だったのは、北朝鮮が反発、暴走するのを心配したからだった。だが、本土がミサイルの射程に入りつつある米国が強い対応を求め、最後は受け入れた。
中国は、北朝鮮に食料やエネルギー支援を続けている。北朝鮮の存在が自らの安全保障にプラスになるとの計算からだ。
だが、北朝鮮が核実験、ミサイル実験を続けるようでは、北東アジアの安定は脅かされるばかりだ。甘い対応が地域のさらなる不安定化を招くことは、中国の利益にもならない。
今回の決議は、外交圧力を強めるねらいだが、北朝鮮を追い詰めるばかりが目的ではない。対話による平和的解決への期待も込めている。
本気で非核化へ歩むならば、国際社会の側には平和や経済発展で協力する用意がある。米中、そして日本などは、そうしたシグナルも送りながら、北朝鮮を外交決着へと引き寄せる必要がある。
国際社会の総意に背いて国の未来など開けない。北朝鮮はそれをしっかり自覚する時だ。
体罰が明らかになった大阪市立桜宮高校の入試について、市教委は橋下徹市長の求めに応じ、体育科とスポーツ健康科学科の入試をとりやめる。
ただし普通科として入試をする。体育系2科と同じ試験科目で受験できる。市教委が市長の顔を立て、同時に入試方式を変えないで受験生に配慮した折衷案での決着だ。
桜宮高校はスポーツを中心にした教育で全国に知られる。体育系2科を志願してきた中学3年生にとっては、入試中止の事態は避けられた。
とはいえ、わかりづらい点も少なくない。市教委はスポーツに特色のあるカリキュラムにする方針だ。「勝利至上主義ではなく他者を慈しむ心を育てる」というが、具体的に何を教えるのか。体育系2科と比べて履修教科に変更はないのか。出願まで1カ月を切っており、早急に示す必要がある。
来年度、市教委は改革の進み具合をみて学科のあり方を再検討するともいう。体育系2科が復活するのか、普通科で入学した生徒は編入できるのか。不安を抱えたままの受験となる。
体罰容認の実態が改まっていない現状では新入生を迎えられない。今回の中止は、橋下氏がそう発言したのがきっかけだ。
高校受験は人生の大事な節目である。本来、受験生にしわ寄せがいくのは好ましくない。
学校教育は生身の人間が主役であり、改革も現場主導が、あるべき姿だ。だが今回、橋下氏が前面に乗り出した。
もとのまま入試が実施された場合の予算執行停止にまで言及して、市教委を追い詰めたことには強い違和感が残る。
入試の中止に加え、教員の全員入れ替えなどのかけ声が先行し、学校やクラブ活動をどう良くするかという本質論が先延ばしになったのは残念だ。
入試の中止が決まった日、桜宮高校3年の運動部元キャプテン8人が市役所で記者会見し、「勝利至上主義ではなかった」「市長には生徒の声をもっと聞いてほしい」と訴えた。
市長が直接、方針を示す「荒療治」を是とする意見もある。社会には、教育現場への不信感があるのも事実である。
だが、橋下氏は生徒の声にもっと耳を傾けるべきだったし、一方的な発言で対立を深めるのでは、根本的な問題解決の糸口はつかみにくい。
体罰をめぐる意識改革などを、教育現場の自発的な発案、責任ある行動で進めていく。その過程があってこそ、学校は変わっていける。