HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 22 Jan 2013 20:21:53 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞: <ポットから/注がれる/お湯は/やさしい/言葉のようだ/…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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 <ポットから/注がれる/お湯は/やさしい/言葉のようだ/私の/心の角砂糖は/カップのなかで/気持よく/溶けてゆく>▼詩人・柴田トヨさんが、九十八歳で出した初の詩集『くじけないで』に収められた「溶けてゆく」だ。トヨさんの詩はまるで疲れた人の体を温め、のどを潤すためにポットから注がれるお湯のようだ▼その言葉が、多くの人の心の角をやさしく溶かしたのだろう。『くじけないで』と第二詩集『百歳』は合わせて二百四万部の大ベストセラーになった。百歳の人気詩人の誕生は、高齢化社会・日本に咲いた一輪の花だった▼<私ね 人から/やさしさを貰(もら)ったら/心に貯金をしておくの/さびしくなった時は/それを引き出して/元気になる/あなたも 今から/積んでおきなさい/年金より/いいわよ>▼これは「貯金」という詩。明治から平成へ。戦争と混乱の時代を生き抜いた一人の女性が、百年かけて、ひっそりとその胸に蓄えてきた思いの深さ、あたたかさ。東日本大震災が起きると、テレビの前で手を合わせながら、こんな詩を書いた▼<私も出来ることは/ないだろうか? 考えます/もうすぐ百歳になる私/天国に行く日も/近いでしょう/その時は 陽射しとなり/そよ風になって/皆様を応援します>。トヨさんは百一歳で天国へ旅立った。今は、そよ風となっているだろう。

 

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