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あの頃、みんなの関心は明日の国情より今日の胃袋だった。終戦の夏には各地にヤミ市が現れ、農家への買い出し、物々交換が広まる。配給頼みでは飢えかねない▼猛烈なインフレに見舞われた復興期は、物価の番人、日銀の見せ場でもあった。経済全般に君臨し、存在感から法王と呼ばれた一万田尚登(いちまだひさと)総裁の時代である。マッカーサーとも渡り合う無二の経済人は、歴代最長の8年半を務めた▼一万田の命日だった昨日、日銀は初めて、政府との共同声明で2%のインフレ目標を打ち出した。無期限の金融緩和で政権を支えるという。政府からの独立が身上の中央銀行ながら、退任前の白川総裁が譲った印象だ。無条件降伏とは言わないが、異例の声明はポツダム宣言に重なる▼安倍首相は「画期的な文書、経済政策の体制変革」と自賛した。アベノミクスによれば、日銀といえども危機下では政府の道具らしい。年2%の物価高を見込んで、家や車を前倒しで買う人がどれだけ出るか。脱デフレは消費者心理と懐具合にかかる▼米国ではオバマ大統領が2期目に入った。お互い財政赤字にあえぐ政権。友を思いやる余裕はなく、為替相場などで利害がぶつかることもあろう。まずは自力で、輸出と内需を立て直すほかない▼初代ローマ皇帝の座右の銘に「ゆっくりと急げ」がある。コツコツやればサクサク進む、といった意味か。飢えずとも、敗戦時に並ぶほどの岐路である。使えるものは使い、試せる手は試したい。自重しながら。